発問1:
世界一のお金持ちは、どこの国の人でしょうか。
国名を予想してノートに書きなさい。
1分後、生徒全員に予想を聞いた。
① アメリカ合衆国 16人
② 日 本 8人
③ ドイツ・イギリス 2人
④ サウジアラビア・中国 1人
「残念ながら、正解はありません」と言って、黒板に『ブルネイ』と書いた。
地図帳1ページを開くよう指示した。
指示1:
全員起立。地図帳でブルネイを見つけた人は座りなさい。
『ギネスブック』を取り出し、ブルネイのボルキア国王が世界1の金持ちであることを告げた。
更に、ボルキア国王のエピソードを紹介した。
① 旅行中に3万ドル(360万円)が入った財布を落としても「たいした額ではない」と言って、捜させなかった。
② 9歳の甥の誕生日に、映画「ミュータント・タートルズ」のセット(95万ドル 約1200万円)をプレゼントした。
発問2:
なぜ、ボルキア国王はお金をたくさん持っているのですか。
地図帳をよく見ると、その答えがわかります。
予想をノートに書きなさい。
3分後、書けた生徒5人が発表した。
熱帯雨林に注目した生徒と、油田に注目した生徒がいた。
前者は木材、後者は原油を輸出して利益を得ていると主張した。
資料集の《アジア諸国の輸出品割合》に注目した生徒がいた。
討論は決着した。
ブルネイは世界有数の産油国である。
その油田は国王が所有している。
ブルネイでは医療費・教育費が原則としてタダである。所得税もない。
指示2:
もう一度、ブルネイの輸出品のグラフを見てください。
気付いたことを発表してください。
①原油を多く輸出している。
②原油と天然ガスで輸出額の95%を占めている。
③その他の割合が少ない。
特定の鉱産物や農産物にたよる経済を《モノカルチュア経済》という。
アジア・アフリカ諸国に多い。
発問3:
モノカルチュア経済の国にとって、困ることは何ですか。
「石油がとれなくなったら輸出するものがなくなる」
「バナナが不作になったら混乱する」という答えが返ってきた。
発問4:
石油が取れなくなった時のことを考えて、ボルキア国王は大金を使って東洋一の施設をつくりました。
それは何だと思いますか。
生徒全員に予想を聞いた。
巨大金庫・自動車工場・原子力発電所・巨大石油タンク・兵器工場など、14個の予想が出た。
しかし答えは出なかった。
「恋人ができたらデーとしたい場所です」とヒントを出した。
すぐに「遊園地!」という声があがった。
私は大きく頷き、黒板に「ジュルドンパーク」と書いた。
ここで、「ジュルドンパーク」を紹介した紀行番組を5分間視聴した。
ジュルドンパークは、東京ディズニーランドをしのぐ規模を誇る。
発問5:
なぜ、ボルキア国王はジュルドンパークを無料にしたのですか。
しかも、すべての遊具・アトラクションがタダである。(現在は、約150円の入場料が必要である)
3つの意見が出た。
①お金が余っているから、国民に喜んでもらおうと思ったから。
②たくさんの外国人にブルネイに来てほしかったから。
③自分の力を世界に示したかったから。
説明1:
どの考えも当たっています。
国王は、もう1つ考えたようです。
つまり、石油だけではなく、観光によって利益を得ようと考えたのです。
今から準備しておけば石油がなくなった時も混乱せずにすみます。
国王は頭がいいと思いませんか?
《モノカルチュア経済の課題》について教科書を読み、授業を終えた。
生徒33人中26人が、この授業を「とても楽しかった」と評価した。
生徒が熱中した授業であった 。
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