ラインサッカーは低・中学年の子供が熱中する教材である。サッカーの基礎技能を育てるにも適した教材である。
埼玉県桶川市立川田谷小学校の松本光男氏は、「ロ-テ-ションラインサッカー」の実践を報告している。(『楽しい体育の授業』1993年N0.明治図書)
松本氏の実践をもとに3年生で追試を行った。役割をロ-テ-ションして行うラインサッカーは、思ったよりも面白く子供の技能は高まった。
松本氏はロ-テ-ションラインサッカーの長所を次の点にあるという。
① キーパー、内野、外野と三つのポジションを経験することにより、それぞれの役割を知り、ポジション別の基礎技能・知識を身につけることができる。
【キ-パ-】
シュ-トを防ぐ。とったボ-ルを味方にパスする(投げる)
【内 野】
攻める(シュ-トする)守る。
【外 野】
味方が攻めやすいようなボ-ルを素早く投げ入れる。
② 兄弟チーム(三チーム)で勝敗を競うので、見学・欠席者が出ても兄弟チームから補うことができる。
今までのラインサッカーは、攻める守るの役割が固定される傾向になりがちであった。
チームでポジションを決めさせると力の強い者が攻めを行い、弱い者が守りになることが見られる。
攻めのポジションを行う子供はボールに触れる機会が多いので、ラインサッカーのルールも分かりうまくなるのも早い。
ところがキーパーや守りばかりをやる子供は攻めのルールが身につかず、ラインサッカーの楽しさも十分に体験できない。
ロ-テ-ションラインサッカーはそういう弊害を除去でき、どのポジションも経験できるので、子供は楽しく基礎技能を高めていくことができる。
実際に行った結果、子供は生き生きと活動し楽しい授業になった。
チーム編成、ゲームの進め方、ルールは松本氏の実践を参考にして次のように行った。
① 一グループ九人とする。
② 一グループを三つに分け、兄弟チ-ムに分ける。
① チ-ム名を決める。
② 試合開始、得点後のキックオフは「足掛け」とする。
③ 反則があった時は、反則を犯した場所から「足掛け」を行う。
④ 試合時間は、前半3分・中3分後半3分の計9分とする。
⑤ ロ-テ-ションは、内野→外野→キ-パ-の順とする。
⑥ 見学者・欠席者が出たら外野・キ-パ-から補充する。内野・キーパ-は同数にする。
① シュ-トの高さは、キ-パ-の肩の高さまでとする。肩以上の高さのものはノ-ゴールとする。
キ-パ-の子供の中で一番身長の低い子供の肩の高さを基準とする。
② キ-パ-は、ボ-ルを捕ったものが投げる。
③ 外野に出たボ-ルは、ボ-ルを捕ったものが転がして入れる。
④ 得点したものが紅白玉を置く。(紅白玉で得点を表示する)
⑤ 審判は相互審判とする。
授業は3年生で3時間扱いで行った。
第一時はルールの説明とゲームである。
級の人数は34名であったので、11名が2チ-ムと12名が1チ-ムとした。それぞれのチ-ムを3つに分け、兄弟チ-ムを作った。
対戦する時は同じ人数で行うように調整した。誰が攻めるのか、誰が守るのか、誰がキ-パ-になるのかをはっきり確認する。
チ-ムを決めた後、ルールの説明を行った。普通のラインサッカーはやったことがあるという。
「ロ-テ-ションラインサッカーをします。やり方を言いますのでよく聞いて下さい」
場作りの図を見せながら、攻め、守り、キ-パ-の三つの役割に分かれて順番に行うことを話した。
「やってみたいですか」と聞くとほとんどの子供が「やりたいです」と答えた。
最初のゲームはうまくできた。ところが次のロ-テ-ションをするところで混乱した。
内野の子供は外野へ、外野の子供はキ-パ-へ、キ-パ-の子供は内野にはいるとなっていたが、実際に移動するとできなかった。
内野の人数が足りないのである。キ-パ-をやっていた子供が外野にいっていたりする。もう一度整列させて役割を確認してからゲームを行った。
誰が同じ兄弟チ-ムなのか分かるようにワッペンかシールを付けておくと目安になる。
攻めは3~4人なので一人のボールに触れる機会は多い。シュ-トのチャンスも多かった。
ルールはゲームをしながら指導していった。ボールにかたまる傾向があったので、外野を上手に使うように指示した。
1時間目はゲームに慣れることで終わった。終わった後、ロ-テ-ションラインサッカーのアンケートを書かせた。
3年1組 名前
1.ローテーションラインサッカ-をしてどんな感想を持ちましたか。
2.次にやるとしたら、どんなルールを作ったらよいですか。
3.相手に勝つためにどんな作戦を立てたらよいですか。
女の子の感想を紹介する。
がんばったラインサッカー
R.Fさん
ラインサッカーをしました。私が一番やりたかったのは内野でした。
だけど、いざやってみるとすごくむずかしかったです。というかこわかったのかもしれません。
相手が強かったのです。ざんねんながら、私のチ-ムは負けてしまいました。でもとっても楽しかったです。
わたしはゴ-ルマンをやった時ちょっと緊張してしまいました。外野の時はボ-ルがとんできてとろうとすると、ほかの人にとられてしまいます。
ラインサッカーは、普通のサッカーとは少し違う楽しい遊びでした。やってよかったです。
R.Fさんは、内野、外野、キ-パ-のポジションをした時の緊張した様子を表現している。
それぞれのポジションの大変さを体験したようである。「ラインサッカーは、普通のサッカーとは少し違う楽しい遊びでした」という感想は、いろいろなポジションを経験できたからであろう。
外野にでると手で投げられることも楽しかったという。ドッジボールに似ていて楽しかったという感想がいくつかあった。
「次にやるとしたら、どんなルールを作ったらよいですか」では次の内容が出された。
・ポジションを自分たちで決める。
・チ-ムで内野、外野、キ-パ-決める。
・シュ-トをする時に肩よりも上にボールがいってもいい。
・外野も外からシュ-トしていい。
・反則があったら反則をとる。
・反則をしたらそこからフリ-キックにする。
・外野なしでスロ-インがいい。
・キ-パ-は1人。キ-パ-の2人は攻めに入る。
子供から出た意見を黒板に書き、次の時間に取り入れるルールをみんなで決めた。
1.ポジションを自分たちで決める。
2.反則をしたらそこからフリ-キックにする。
3.外に出たらスローインにする。
ポジションについての要望が多かったので、内野・外野・キ-パ-のポジションはチームで決めてよいことにした。
相手に対して危険なプレーをした場合には、反則をとることにした。反則をしたら、その場から相手のフリ-キックにした。
外野は普通に投げ入れていたが、頭の上からスローインするようにした。スローインの仕方について指導してから始めた。
普通のサッカーのルールに近づくようにしていった。
ただ、ロ-テ-ションラインサッカーの骨格を変えるルールについては、受け入れないようにした。
「相手に勝つためにどんな作戦を立てたらよいですか」では次の考えが出た。
・なるべくゴ-ルの近くボ-ルをける
・敵のいないところを走るといい。
・パスをもらったらすぐに投げる。
・パスをつないで遠めからシュ-トする。
・キ-パ-がとったら外野に、外野が内野にパスする。
作戦はチームごとに話し合わせ、相手に勝てるように工夫させた。
3時間という短い授業であったが、ロ-テ-ションラインサッカーの面白さを体験し、シュ-ト、パス、キ-パ-の技能も高まっていった。
ポジションをロ-テ-ションする中で役割を知り、サッカーへの基礎技能が身についていった。
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