櫛引丈志氏『「五井先生と太郎」の授業』を「修正追試」した。
読むだけで「感動する」力のある教材である。
修正点は、
(1)帰りのホームルームで行うため細分化したこと、
(2)名前を書くだけでなく全員に呼ばせたこと、
(3)実話であることを知らせたこと(山本雅博氏の追試)
の3点である。
以下、中学1年16人のホームルームでの実践記録を紹介する。
生徒の名前がひらがなだけで書いてあるプリントを配布。
「え、何をするの?」「何、これ?」
指示1:
自分たちの名前を漢字にします。3分です。相談は禁止です。
隣と相談しようとしていた生徒が2人いたが、「相談は禁止です。」で、書き始めた。
「わからない。」「あの漢字何だっけ。」「書けないよ。」
指示2:
3分です。赤ペンを出しなさい。
「無理。」「駄目だ。」
赤ペンを出したことを確認。
説明1:
まずは、隣同士で確認します。
自分の名前があっていたら、赤で丸をつけます。
間違っていたら、教えてあげなさい。
教えてもらった人は、写します。
「写すこともお勉強です。一番いけないのは、何もしないことですよ。」
「間違ってごめん。」「これでいいんだよね。」
指示3:
今と同じように、本人に確認してもらいます。
正解なら丸、間違った人は正解を写します。
全員分終わった人は、先生に見せにきます。それでは、どうぞ。
生徒が戸惑っていたので、「席を立ってもいいですよ。」と指示。
「そんな漢字だっけ?」「これであってる?」「えっ、ここに点があるの?」
この間に、黒板に1から16まで出席番号を書く。早く終わった生徒に、黒板に自分の名前を書かせる。
発問1:
丸が10個以上の人?13個?15個?16個?
挙手で確認。10個以上7人、13個以上4人、15個以上2人、16個1人。
16個正解だった生徒を、「すごい」とほめた。
説明2:
次に、名前を呼ばれた人は元気よく返事をして立ちます。
私が黒板を指します。
本人以外の15人で、その人の名前を呼びます。
指示4:
(16番を指して)15人で名前を呼びます。○○□□(16番の氏名)、さんはい。
うまく呼べなかった。
「もう一度。15人で名前を呼びます。○○□□、さんはい。」
15人の生徒「○○□□」
○○□□「はい。」
指示5:
返事をして立ちます。
○○さんが立つ。イスを机の中に入れていることをほめる。
同じように、番号を指し、全員で呼び、返事をし、立たせた。
14番までゆっくりと、その後はテンポよくやった。
生徒によって、呼ばれ方が違かった。
大きい声で呼ばれる生徒、早口で呼ばれる生徒、笑いながら呼ばれる生徒など。
指示6:
帰りのあいさつをします。はい、さようなら。
「さようなら。」
準備 「五井先生と太郎」の印刷。
B4の表に4ページ分、裏にも4ページ分。
全部で5枚のプリントになる。
「五井先生と太郎」p96~111までを印刷したプリント2枚を配布。
指示7:
私が読みます。目で追ってください。
すっと読み始める。
次のことに気をつけて音読した。
(1)地の部分は、節をつけて少し早口。
(2)地の部分の動詞の部分で、生徒を見るようにした。
(3)セリフはゆっくり、はっきり、少しだけ感情を込める。
生徒は、真剣に目で文章を追っている。
指示8:
時間です。続きは明日読みます。
前日の内容を一字読解で確認。
発問2:
登場人物は誰ですか。
「五井先生です。」「太郎です。」「山田太郎です。」
発問3:
山田太郎は五井先生に何と呼ばれてますか。
「太郎です。」
発問4:
五井先生と太郎は何の試合をしたのですか。
「柔道です。」
発問5:
太郎が友だちと勉強をしたとき、何をしてしまいましたか。
「煙草とお酒です。」
発問6:
太郎は、自分だけが名前呼ばわりされることをどう思ってましたか。
「納得できない。」
「五井先生と太郎」p112~115まで印刷されたプリント1枚を配布。
指示9:
続きを読みます。目で追ってください。
この日は、連絡事項が多く、5分しか時間が取れなかった。
実際の音読は2分。
たった2分でも生徒は、集中して聞いていた。
指示10:
時間です。続きは明日読みます。
「五井先生と太郎」p116~129まで印刷されたプリント2枚を配布。
指示11:
続きを読みます。
すぐに読み始めた。
セリフをゆっくり、はっきりと読んだ。
p121の太郎のセリフから、クラスの空気が変わる。
それまでも静かに聞いているのであるが、それまで以上にクラス全体の空気がシーンとなる。
読み進むにつれ、鼻をすする音が聞こえる。
音読後、
発問7:
実話だと思う人?
挙手で確認。16人中9人がゆっくりと手を挙げた。
説明3:
実話です。
ポストイットを配布。
指示12:
感想を書きなさい。3分です。
すぐに、感想を書きはじめた。
次の日、感想をプリントとして配布。
以下、生徒の感想。
・最初はどんな話かなと思って聞いていました。読み終わってとてもかわいそうだなと思いました。私はお父さんとお母さんに名前を呼ばれて幸せだなと思いました。
・太郎君は五井先生が呼びすてしていた理由を聞いて、太郎君はすごく本当は嬉しかったと思う。でも五井先生は亡くなってしまったけど、太郎君の中では生きていると思いました。
・感動した。太郎は悲しい、うれしかったと思う。
・この話が実話だということにおどろいた。
・五井先生は、とてもやさしい人だなぁと思いました。とてもいい話でした。
山本雅博氏 道徳「五井先生と太郎」の授業 櫛引丈志氏の授業を修正追試 TOSSランドNo.2210239
「五井先生と太郎」は、丸山浩二著『鈍行列車』ダイナミックセラーズ出版に収録
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