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TOSSランドNo: 7274055 更新:2012年12月28日

「赤い椿白い椿と落ちにけり」(河東碧梧桐)授業化のための覚書


私は,河東碧梧桐に関する本や椿に関する本を集めた。

1 『碧梧桐句集』大須賀乙字選(俳書堂,大正5年[特選名著復刻全集 近代文学館,昭和46年])
2 『碧梧桐は斯ういふ』河東碧梧桐(大鐙閣,大正6年)
3 『碧梧桐句集』亀田小蛄編(輝文館,昭和15年)
4 『河東碧梧桐 俳句シリーズ・人と作品6』阿部喜三男(桜楓社,昭和48年)
5 『なつかしき人々―碧梧桐随筆集―』瀧井孝作編(桜楓社,平成4年)
6 『碧梧桐全句集』瀧井孝作編(蝸牛社,1992年)
7 『俳句の謎 近代から現代まで』(学灯社,1999年)
8 『俳句の花 上巻1~5月』(創元社,1997年)
9 『河東碧梧桐の基礎的研究』栗田靖(翰林書房,2000年)

1~8は,奈良県内の公立図書館にあった。
9のみ奈良県の公立図書館に所蔵なし。奈良大学にはあるが,貸出不可。定価16000円。古本でも10000円。買うのはつらい。探すと大阪市立図書館にあったので,人に頼んで借りてきてもらった。
借りてよかった。この本がいちばん役に立った。というか,この本さえあればほかはいらないぐらいのものであった。著者の栗田靖氏は,俳人にして河東碧梧桐の研究者である。同書は河東碧梧桐に関する最新・最高の研究書である。
ありとあらゆる文献を調べ尽くしている。
同書の中に,「赤い椿白い椿と落ちにけり」の鑑賞が7ページに渡って書かれている。この中に,「赤い椿…」に関するデータがずらりと並んでいるのだ。また,参考文献から,この句に関する諸家の鑑賞や批評を引用し,さらに栗田氏自身の見解も述べている。
この句は「明治二十九年二月末日付で「春季雑詠」と題して,子規・瓢亭・虚子・漱石・碌堂(後の極堂)に評点を乞うた四十一句中の一句。」(9 『河東碧梧桐の基礎的研究』)である。
その評定の実物コピーが,3 『碧梧桐句集』亀田小蛄編(輝文館,昭和15年)の見返しに載っている。(『明治俳壇埋蔵資料』というのがネタ元らしい。)

3

この句が,新聞「日本」明治29年3月11日に載る。が,このときの句形は「白い椿赤い椿と落ちにけり」であった。9 『河東碧梧桐の基礎的研究』によれば,「新聞「日本」の俳句欄で赤と白の順序が入れ替わったのはおそらく子規の添削であろう。」とのことである。
碧梧桐は,この句を選集『新俳句』(明治31年3月)に収録する際,元の句形「赤い椿白い椿…」に戻している。
この句の解釈には,大きく分けて次の2とおりがある。

A 落ちている椿の花を詠んだ。(正岡子規・平井照敏・高浜虚子・中村俊定・大野林火・大岡信ら。)
B 落ちつつある椿の花を詠んだ。(山口青邨・寺田寅彦・小室善弘・栗田靖ら。)

 私は,栗田氏の解説に納得した。

 まず,問題となるのは,座五の「落ちにけり」であろう。
 虚子の有名な句に
  桐一葉日当りながら落ちにけり
がある。この「落ちにけり」は「落ちる」という動作が今完了したことを意味しており,「落ち敷いているさま」というような静止の状態を詠んだものではない。広い大きな桐の葉が枝を離れてゆったり落ちるさまを写生したもので,「ながら」という時間の経過をを表す語を伴って「落ちる状態」が緩やかに完了したことを示しているのである。
 つまり,椿の句の「落ちにけり」も「落ち敷いているさま」というような静止の状態を詠んだものではなく,赤い椿が落ちてはっとする間もなく白い椿が落ちたことに感動しているのである。つまり,作者は赤い椿の花がぽたりと落ちたことに対し,アッと驚き,その驚きが消えない間に今度は白い椿がぽたりと落ちたのである。椿の生命を極めて即物的,印象鮮明に捉えたところにこの句の生命がある。子規以来諸家が説くように「落ちている状態」に対する感動ならば「落ちゐたり」という表現がとられるべきである。


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