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TOSSランドNo: 1243018 更新:2012年12月25日

木版画「銀河鉄道の夜」のシナリオ


~版画で夜空の機関車を~
 宮澤賢治作品の中で、最も長編で、傑作とされる「銀河鉄道の夜」。
 物語の内容が難解な部分もあるが、読者を幻想的な世界に引き込んでいく不思議な魅力がある。
 最近では、アニメの映画で放映されたこともあり、その知名度は比較的高い。
 「酒井式描画のシナリオ6年(明治図書)」では、澁谷一男氏と田村勝氏の2名のシナリオが紹介されている。
 私は、これを版画で表現させたいと考えた。 
 偶然にも両氏のグラビア写真(作品)の白黒コピーを取ったところ、夜空を走る機関車の版画作品のイメージとぴったり重なったのであ る。
 そこで、私は機関車が夜空を走っている場面を版画で挑戦させたいと考えた。
 以下にシナリオの概要を示す。

○総時数11時間(45分×11)

第一幕(45分)  ラフスケッチをする  ○ 他の人と違った構図を
第二幕(45分)  蒸気機関車を描く   ○ ラフスケッチをもとに資料を見て
第三幕(180分)  蒸気機関車の部分を彫る ○ 彫刻刀の使い方を把握して
第四幕(45分)  風景を描く  ○ 機関車とのバランスを考えて
第五幕(90分)  風景の部分を彫る  ○ 黒色になる部分を考えて
第六幕(90分)  刷る→彫り直し→もう一度刷る ○ 刷り具合を見て

<準備物>
・ ラフスケッチ用B6大のキリン紙(裏に 何か印刷してあるものでよい)児童数×3枚分。
・ 版画板児童数分。大きさは、22.5㎝×30㎝。
・ 黒の油性サインペン児童数分。(中細と極細の両方あるもの)
・ 蒸気機関車の資料を印刷したもの児童数 分。(写真、酒井式の絵画作品の白黒コピー、本の挿絵など)
・ 版画用紙児童数×2枚分。
・ 版画作業板児童数分。  
・ 版画インク黒色。     
・ ローラー
・ バレン

第一幕 ラフスケッチをする(45分)

発問1:

「銀河鉄道の夜」という話を知っている人?

(5人ほど挙手。)
題名、聞いたことがある。
映画で見たことがある。

説明1:

学級文庫にある「ツェねずみ」や「セロ ひきのゴーシュ」の作者の宮澤賢治さんが書いた作品です。
 

発問2:

どんなお話だったか教えてくれませんか。   

二人の主人公が出てきて、旅をする。
ジョバンニとカンパネルラ。
銀河鉄道に乗って、いろんな不思議なことに出合うんだよ。
最後にカンパネルラが死んじゃうんだ。

説明2:

二人の主人公が銀河鉄道に乗って宇宙を旅する。
旅の中でいろいろな不思議な出来事に出合うという話ですね。

「銀河鉄道の夜」は長い物語で、全部を読み聞かせるにはかなりの時間を要する。
また、難解な部分も多い。
そこで、全部を読むのではなく、あらすじを紹介してから、描かせたい部分のイメージをつかませる。

指示1:

目をつぶってごらん。

説明3:

みんなの心の中にスクリーンが広がります。

指示2:

スクリーンに銀河鉄道を写してみよう。        

発問3:

どんな汽車が走っているかな。
        

発問4:

まわりの様子はどうかな。   

「夜空」「宇宙」「蒸気機関車」「不思議な旅」「星」などの言葉を聞かせながら、物語の雰囲気を味わわせたい。

指示3:

ゆっくり目を開けなさい。

指示4:

自分の心に写った様子を発表しましょう。      

夜空をかけぬける汽車。      
煙を出している蒸気機関車。
まわりにはきれいな星。       
地面から遠くはなれた高いところ。

お互いの発表を聞き合うことで、イメージがさらに広がってくる。
ここでB6大のキリン紙を配る。

指示5:

今からラフスケッチをします。
自分のイメージで銀河鉄道を描きなさい。

その際、次の3点に注意して描くよう伝える。                 

(1)ラフスケッチなので簡単に描く。
  (「例えば」と言って、教師が黒板に例 示する。子どもたちが、どの程度まで描 けばいいかという目安になる。)
(2)列車はななめにおもしろく走らせるように描く。 (立体感や動きを出すため。)
(3)他の人と違った構図を描けたら成功であること。
  (「友達と違っているからいいのです。 ○○君、すごい。この構図はまだだれも 描いていないよ。」とオーバーにほめる とよい。)

 。

特に(3)は強調したい。
ここで、様々に違う構図が出来上がるからである。
一枚描いたら、教師に見せる。
早くできた子には、2枚目、3枚目を描かせ、最後にその中から気に入った一枚を選ばせる。
もちろん教師もアドバイスをする。

第二幕 蒸気機関車を描く(45分)

実際に蒸気機関車を見たことのある子は少ない。
どう描いたらいいかの参考資料として、蒸気機関車の写真のコピーと前述の田村勝氏シナリオ作品(写真)のコピーを全員分印刷して配布した。
資料を見ると、子どもたちは口々に、「おっ、これかっこいい。」「こんなふうに描いてみたい。」とつぶやいていた。
なお、蒸気機関車の写真は、インターネットで「蒸気機関車」を検索して選んだものである。

説明4:

(ラフスケッチと版画板、サインペンを 配った後、)これから版画板に蒸気機関車を描きます。

指示6:

自分のラフスケッチをも とに、資料を参考にしながら描きなさい。

注意点は、次の3つ。
この部分は、田村勝氏シナリオの追試である。

(1)自分が想像した蒸気機関車を描く。
(2)煙突、車輪、ピストンは入れる。
(3)描く順番は、ピストン→車輪→その隣の部分、隣の部分と描いていく。

(1)で、必ずしも写真の通りに描かなくてもよいことを伝える。
(2)を入れることで、蒸気機関車であることを絵に表すことができる。
(3)によって、車輪の間隔をうまく調節して描くことができる。

なお、この作品は版画であるので、出来上がりは反対に写ることをあらかじめ伝えておくことも必要である。
(特に、文字を描く場合など)

第三幕 蒸気機関車の部分を彫る(180分)

 

ここから、いよいよ彫りに入る。
酒井式の「部分ができたら彩色」と同様に「部分ができたら彫る」という作業である。
下絵ができた蒸気機関車の部分を彫刻刀で彫らせていく。
作業の前に彫刻刀の種類や使い方を確認する。
ここでは、図画工作用掛図(彫刻刀)を活用するとよい。

指示7:

(掛図を指しながら、)彫刻刀の種類を言いましょう。

三角刀、平刀、丸刀(小丸刀)、切り出し。

指示8:

実際に彫るときのように、彫刻刀を持ってごらんなさい。

説明5:

(ここで教師が机間巡視。「合格」「不合格」の評定をし、合格の子を立たせていく。)
今、立っている子が合格です。

指示9:

座っている子に正しい持ち方を見せてあげなさい。
 

彫刻刀を持っていないもう一方の手も添えて、両手で持つのが正しい持ち方である。
この他、彫刻刀はいつも前方に動して彫り進めていくこと(だから版画板を回していくこと)をあらかじめ確認しておく。
これらのことは全て作業を効率良く進めていくだけでなく、けがの防止対策になることも伝えておかなければならない。
この後、それぞれの彫刻刀で様々な彫り方があることを掛図を使って知らせておく。

次のように板書もした。
 ・細いところは、三角刀  切り出し
 ・浅く彫るには、平刀
 ・深く大きく彫るには、丸刀

説明6:

蒸気機関車の部分を彫ります。

指示10:

サイン ペンの黒色の線は必ず残すようにして彫 りなさい。

指示11:

できた人は、機関車のまわりのふちどりもします。

<ふちどりについて>

機関車の隣の空の部分は、原則として黒色で表すことになる。
したがって、機関車を黒色で表現した場合に、隣の空の黒色と区切りがつかなくなるので、ふちどりまでさせるのである。
口で説明しただけでは、わからない子も多いので、全体で質問を受けた後、「わからないことや心配なことがあったら、すぐ先生に聞きなさい。」と言って、席をまわる。
作業が始まったばかりの時には、不安な子も多い。
「よし、この調子。」とほめてあげたり、「ここ、大丈夫?」などと声をかけてあげたりすると、子どもたちは安心する。

第四幕 風景を描く(45分)

機関車ができあがったので、次はまわりの風景である。

指示12:

ラフスケッチを参考にして、機関車の まわりに風景を描き加えなさい。

機関車とのバランスを考えて描く。
特に、機関車の部分の面積が少ない(小さい)作品に対しては、画面がさびしくならないようにまわりの風景を多めに描き加える。
機関車の近くに大きな惑星などを描いて、遠近感を出すのも一つの方法である。
ちなみに、次のように板書しておいた。 

風景を描く。 (星、惑星、駅、家、地上など)
 

子どもたちの中には、機関車を彫り上げたことによって、ラフスケッチのときとイメージが変わったり、さらに描き加えたくなったりする子がいる。
私のクラスでも、「先生、スケッチとちょっと変えてもいいですか。」「図鑑で、星を見て描いてもいいですか。」と聞きに来た子がいた。
そんなときは、「はい、どうぞ。いいですよ。」と返した。
思い切って子どもたちにまかせることも必要である。
「星座や駅を描きたい。」と言ってきた子に対しては、(それらが描かれている)本の挿絵を参考にするよう話した。
最後に、「機関車と風景以外のところは、彫らずに黒色になるように残しておくこと」を忘れずに伝えておく。 
 

第五幕 風景を彫る(90分)

指示13:

サインペンの黒色の線は必ず残すよう にして、風景の部分を彫りなさい。

すでに機関車を彫り終えているので、子どもたちは安心してすぐに作業にとりかかる。
ここでの注意点は「黒色になる部分を考えて彫る」ということである。
機関車と風景以外に彫らずに残っているところは、全て黒色になるからである。
刷ったときに、風景がどう写るかを考えながら作業を進めていく。

第六幕 刷る→彫り直し→もう一度刷る (90分)

1.刷る             

説明7:

版画版にローラーでインクをムラなくぬります。

指示14:

インクをぬったところと紙の表側がつくようにして刷りなさい。

この後の注意点はバレンのこすり方である。

(1)中心から外側へ軽く大きくこする。
(2)それぞれの部分を円を描くようにこする。
(3)紙の端を少しめくって、刷り具合を確かめる。

ここまでくればOKである。
ゆっくり紙をはがして、全体の刷り具合を見る。

2.彫り直し

刷り具合を見て、彫り残しや彫り足りない部分があれば、彫り直しをする。
この時、版画板にはまだインクが残っている。
汚さないようにするため、上に新聞紙をかぶせ、直す部分に穴をあけて彫るようにさせる。

3.もう一度刷る

 

彫り直しが終わったら、もう一度刷る。
一回目で、版画用紙の表裏をまちがえたり、インクのつき具合がよくなかったりした子には特に注意して刷らせる。  
合計2枚刷り終えたら、うまくできた方を選んで(教師もアドバイス)、提出。
提出の際、版画用紙の右下余白に鉛筆で小さめに名前を書かせた。

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