TOSSランド

コンテンツ登録数
(2019/09/20 現在)

21653
TOSS子どもランド TOSSオリジナル教材 TOSS動画ランド TOSSメディア TOSS-SNS TOSS公式(オフィシャル)サイト
TOSS子どもランド
TOSSランドアーカイブ
TOSSランドNo: 3110039 更新:2012年11月07日

向山洋一氏の「新卒教師のための十ヶ条」を聴いて


新卒教師のための十ヶ条として、向山先生は次の10項目をあげ説明してくれました。

① 挨拶は自分からせよ
② わからない時には自分から教えてもらえ
③ 実践ノートを必ず書け
④ 教室設計せよ
⑤ 学級を設計せよ
⑥ 授業の計画を立てよ
⑦ 責任は自分のこととして考えよ
⑧ 本を読め
⑨ 他人より10%程度努力をせよ
⑩ 研究授業は進んでやれ

『現代教育科学』4月号(1985 No,341)に向山先生は、「大学における私の講義」の中で「新卒教師のための十ヶ条」を書かれています。
 項目はほとんど同じですが、若干違っているところを以下に示します。

③ 授業・実践の記録を必ずつけよ
⑥ いかなる結果も自分の責任としてまず考えよ
⑦ 授業計画は明確に立てよ

⑥と⑦の順序が変わっているだけであとは同じです。『現代教育科学』の中では、④、⑤、⑦については説明していませんので、この講義録を参考にしていただければ幸いです。

1.新卒教師のための十ヶ条は、教師の原点である。

この講義を聞いて、私は10ヶ条は、新卒だけでなく、10年、20年と教師をやっている人間にもあてはまる、教師の原点だと考えます。
 私は機会をいただき、『楽しい学習活動のさせ方』(明治図書、1985年出版予定)という著書を書かせていただきました。
 それを書くことができたのも、向山先生が述べている10ヶ条を実践してきたからです。
 特に役に立ったのは、③の「実践ノートを必ず書け」ということです。私も新卒以来実践ノートを書いてきました。大学ノートに毎日1ページずつ、細かい文字で生活、学習のすべてを記録しました。新卒以来のノートを広げ、「楽しい学習生活」に関する部分をメモしました。
 多くは失敗の記録です。しかし、その失敗の記録が役に立ったのです。そこには、⑥「授業の計画を立てよ」の発問、指示が記録されていたのです。
 どんな発問をしたら、どんな反応があり、どんな授業になったのかが克明に書かれていました。子どもの生の反応が記録されているのです。
 失敗をした授業には共通したものがありました。また、成功した時にも同じパターンがありました。
 それをもとにして、『楽しい学習活動のさせ方』の半分を書くことができました。その時、しみじみと実践記録を書くことの大切さを感じました。
 実践記録を書くことは、「教室を設計せよ」、「学級を設計せよ」、「授業の計画を立てよ」、「本を読め」、「他人より10%程度努力をセよ」、「研究授業は進んでやれ」の内容が自然に入ってきます。
 どんな教室にするのか、どんな学級にしたいのかが実践ノートに書かれているのです。
 毎日書くわけですから、他人より10%は努力していたと思います。
 新卒3年間は、「教材研究ノート」を作り、日曜日に1週間分をまとめて書いていました。
 自分がやってきたことを10ヶ条に整理されてみると、これは新卒の教師だけではなく、プロをめざす教師なら誰でもやらなければならないことだと痛感しました。

2.教育書には今まで書かれなかった10ヶ条である。

 10ヶ条は単発にはどこかの教育書にも書かれているが、まとまったものとして述べられているのは珍しいです。
 しかも、具体例が向山先生の体験を通して述べられているのが強いです。学者には書けない、現場の実践例が次から次へと出てきます。「例えば」ということばが、多く出てきます。その後実例が述べられます。
 1つ1つの項目はさほど新しいものではありません。「挨拶は自分からせよ」当たり前です。しかし、挨拶というものがどんな意味を持っているかについては、考えたことがありません。
 向山先生は、挨拶をするというささやかな事柄の中に、「気配りをする」という大切な原理が込められていると指摘します。
 挨拶というささやかな中に、大きな意味を見つけ述べているところに新鮮さがあります。
 それと、誰に挨拶するのかという内容が新鮮です。先生にする。同僚にする。子どもにする。当たり前です。しかし、用務員さん、給食室のおばさんに挨拶をするという発想はできません。
 「わからない時には自分から教えてもらえ」。ここまでなら、私にも言えます。しかし、どこで、どんな人に教えてもらうのかというと具体的な場面を示した教育書はありません。
 向山先生は、次のように述べています。

 聞く場面を粗く言えば二つです。
 ひとつは学年会議といわれる会議がございますから、毎週必ず行われますから、その場で会議に出して聞く。
 もうひとつは、個人的に聞く。ということがございます。

こう述べられますと、新卒でも聞くことができます。聞く対象が具体的に示されているからです。

 学校の中で頼れる一人をどの様に発見するかということも大変大事です。…略…教師としての腕がいいとか、きちっとした事をきちんと言ってくれる人、そういった人を見つけ出すということが大事です。

こういうことを書いた書物に出会ったことがありません。しかも、そういう人は、どんな学校にも1人か2人はいるものだと断定しているところに共鳴を覚えます。
 私の歩んできた学校にも、必ず1~2人はいました。直接的に教えてもらわなくとも、見たり、聞いたりして学んできました。

 「実践を記録しておきなさい。」という話はよく聞きます。私が始めたのも、書物を読んでからです。しかし、どんな観点でどんな内容を書いていけというところまで述べたものはありませんでした。

この授業のところで何を教えたいのか、どの様なことをやりたいのかということは、多少辛くてもですね、自分自身の言葉で書く、あるいは納得したことを書く。

ここで大切なのは、「自分自身の言葉で書く」ということです。
 『楽しい学習活動のさせ方』で役に立ったのは、まさしく、この「自分自身の言葉で書か」れた部分でした。
 どんな発問をしたら、どんな子どもの反応があったのか。子供の言葉が記録されていました。そして、どんな板書があり、どんな結果になったのかが書かれていたのです。
 失敗したのはどうしてなのか、子どもの顔はどんな表情だったのか、子どもは授業に対してどんな感想を持ったのかの記録が役に立ちました。
 それは、すべて、私自身の言葉で書かれていたからです。
 改めて向山先生から聞きますと、納得します。なかなか普通の教育書には書かれていない内容です。

3.教室を設計する。学級を設計する。授業の計画を立てる。

教室を設計する例として図を描きながら説明してくれました。小松先生が記録してくれましたので、それを基に載せます。

Sekkei1
Sekkei2
Sekkei3
Sekkei4

畳を一枚教室に置くという発想には驚きました。一枚置くだけで、教室の環境はガラリと変わるでしょう。
 普通は、壁にどんな物をはるか、前面にはどんな掲示をするかなど考えますが、畳には驚きました。

 「教室を設計する」を読んで、学級を組織するということがどんなことか、よく分かりました。説明が論理的で分かりやすいのです。まとめると次のようになります。

これを説明するのに、次のように述べます。 

Sekkei5

この学級の組織を組織するという形は二つあります。
 1つはしくみをつくるということです。ひとつはルールを作るということです。
 しくみの中には大ざっぱに言って当番と係とあります。
 当番というのは……。
  略
 もう一つルールなんですが、このルールをやる時に私の本の中のいくつかに書いてございます。

 この後、細かくルールについて具体例を挙げて説明しています。このように整理をして説明されるとよくわかるのです。
 学級を組織するのに、しくみとルールがあり、しくみに当番と係があることを初めて知りました。
 しかも係が文化的であり、子どもの自由な発想が行かせることも知りました。ルールをどのように決めていくのかもわかりました。
 こういうことをきちんとおさえていくことが、学級を組織することの基本だと学んだ学生は、大変幸せだと思います。
 知って指導するのと、知らないで指導するのとでは、雲泥の差が出てきます。

 「授業の計画を立てる」内容として発問・指示、留意点が大切であると述べます。
 発問は子どもに言ったままがいいということです。私も授業の記録をノートに書いてきましたが、一番役に立ったのは、生の発問でした。
 子どもがどんな発問の時に動き、動かなかったのか、発問が記録されていたために分析できました。
 一日に一時間でも二時間でも、発問・指示、留意点をおさえて指示していけば、必ず力がつくと思います。
 その積み重ねが実力になるのです。実力をつけるにはある一定の努力が必要です。3年間続ければ、どんな発問がいいのかの見通しがつきます。

4.責任は自分のこととして考える。

教師に限らず、一流の人間はすべて、責任は自分のこととして行動しています。
 責任を他人のせいにしている間は、力はつきません。自分のこととして受け止めた時、問題意識が出来るのです。
 問題意識が出来た時、そこに工夫とか創意とか発見とかが生まれます。
 いつも子どものせい、親のせいにしている教師は成長しないのです。私は人間の幸福も同じだと考えます。不幸なのは社会が悪い、他人が悪いと嘆くのではなく、自分自身に問題を投げ掛け、そこから解決していかない限り、いつまで経っても幸福になれません。
 向山先生のお話には、こういう教育についてだけでなく、人生そのものに深く関わってくる内容が多くあります。
 それが多くの人々の共感や共鳴をもたらすのだと考えます。いつも人間の生き方を見つめ、生き方の原点を照射しているのです。
 10ヶ条の中でも異質の条件になっています。

5.雑誌の読み方を学ぶ

向山先生は常々、本を読めと言います。そして向山先生御自身、多くの本を読んでいます。
 私は何回か向山先生の書斎におじゃましたことがあります。床から天井までの本棚にびっしりと本が並んでいるのに驚きました。
 どんな本を読んでいるのか、行く度にメモをしてきます。
 見て感じたのは、教育の思想書、単なる入門書ではなく、分厚い専門書が多いことです。○○○全集というのが並んでいます。教育の原理・思想について、深く学ばれていることがわかります。
 それと、お話にもありましたように雑誌が並んでいます。雑誌は「あとからまとめて使って行く」ということを学びました。
 すぐ役立つことばかり考えてきましたが、何かをまとめる時に、バックナンバーを読むことによって、その問題についての様子がわかるのだということです。

6.研究授業を多くすることが授業の腕をみがく

プロになるためには、大小100回の研究授業をしなければならないと言います。
 私は教師になって13年目ですが、数えて見ると、33回程度しか授業をしていません。100回には遠く及びません。
 100回やるということがどんなに大変かわかります。学年・教科での授業はやったことがありません。
 向山先生のお話を聴いていますと、自分から場をつくってなさってきたことがわかります。
 伸びるためには、力をつけるためには自分が動く、それがプロの条件のようです。
 私も100回をめざしていきたいです。

7.ささやかな中に深い実践をつくる

 新卒教師のための10ヶ条を読み返して感じるのは、向山先生の素晴らしいのは、私たちが何気無く見過ごしている出来事を鋭くとらえ直し、深い実践をしていることです。
 聴かせる、読ませる内容にまで掘り下げていることです。そこに非凡さを感じます。
 問題意識の深さ、感性の鋭さ、豊かさ、物事を1歩突き詰め考えていく洞察力。それは向山先生の個性かも知れません。
 しかし、1つ1つ分析していくとそこに真似のできる方法が浮かび上がってきます。
 1つは実践の裏付けがあることです。理屈を論証するデータ・話題が豊富なことです。やはり、人のできないくらいの実践を行っていることです。
 2つ目は、実践の目安として数字で表現していることです。10%努力せよとか、100回授業研究をせよとか、3年続けよとか具体的に示しています。
 プロになるためには、一定の時間、量を積み重ねなければならないことを示しています。

 以上が、ささやかな中に深い実践を作っていくもとになると考えます。


1回すごい!ボタンが押されました

コメント

※コメントを書き込むためには、ログインをお願いします。
New TOSSランド