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TOSSランドNo: 7206815 更新:2012年12月16日

「ろくべえまってろよ」で起承転結を教える


1 「起承転結」の謎

作品全体をとらえる向山型「分析批評」として,現在までに公開されているのは,次の二つの実践である。
一つは,1993年の『桃花片』の実践である。
粗く言って次のような流れになっている。

① 作品を,起承転結に分けさせる。
② 作品を,八つの事件に分けさせる。
③ 事件ごとに要約させる。
④ 作品の主題を考えさせる

今一つは,1981年の『ひょっとこ』の実践である。
こちらは,次のような流れになっている。

① 作品全体を,いくつかの事件に分けさる。
② 事件ごとに要約させる。
③ 要約した事件を,起承転結に分類させる。
④ 作品の主題を考えさせる。

二つの実践の指導の順序は,一箇所だけ異なっている。
『桃花片』の授業では,いきなり作品を起承転結に分けさせている。
ところが『ひょっとこ』の授業では,起承転結に分けさせる指導が,後になっているのである。
この違いは何なのか・・・・・・
どちらが優れているのか・・・・・・
両方の流れを授業にかけてみると,おぼろげながら分かってきた。

2 いきなり「起承転結」を扱う

私の『チワンのにしき』の実践は,『桃花片』の授業を応用したものだった。
しかし,流れは『ひょっとこ』に近かった。
今回,現在(1994年度)担任している5・6年複式学級で『ろくべえまってろよ』を扱った。
3回ほど読ませた後,いきなり「起承転結」に分けさせてみた。

指示1:

『ろくべえまってろよ』を,起承転結に分けなさい。

持ち上がりでない6年生は「起承転結」を知らない。
5年生に「起承転結」について説明させてみる。
6年生は「分からない」と言う。
このような場合,教師の説明の技術が必要である。
私は,次のようにする。

説明1:

ほとんどの物語は,起承転結の四つの部分に分けられます。
●「起」は「初めに・・・・・・」何かが起こるという部分です
●「承」は「次に・・・・・・」何かが起こるという部分です。
 「次に・・・・・・次に・・・・・・」といくつもつながる場合があります。
●「転」は「ところが・・・・」何かががらっと変わってしまう部分です。
●「結」は「とうとう・・・・」どうなってしまったという部分です。

「 」の中は板書する。
これでどの子も作業に入ることができた。
しかし,一口に「分ける」といっても,子どもによってはずいぶんと効率の悪い作業をしている場合がある。
そこで,次の指示を補足した。

指示2:

起承転結の切れ目の三カ所に,線を引きなさい。

これで同じ作業になった。
授業は,このような様々な技術に支えられている。
 
 
授業の続きである。
物語をいきなり起承転結に分けさせるのは『桃花片』型の流れである。
ポイントは,次の1点である。

子どもたち一人ひとりに,教師のところへ,答えを持ってこさせる。

子どもたちは,次々と教師のところへ自分の分け方を持ってくる。
教師は,これを一人ずつ採点していく。
実は,ここに『桃花片』型の特色がある。

3 「個別評定」をする

『ひょっとこ』の実践では,物語全体を八つの事件に要約させた後,この八つを起承転結に分けさせている。
子どもの作文が三つ公開されている(※1)が,分け方はどれも同じである。
子どもの作文からは,これが討論から導き出された結論なのかどうかは分からない。
私は「八つの事件の分け方なのだから,子どもは討論によって結論を導き出すことができる」と判断した。
私が『チワンのにしき』を実践した時には,『ひょっとこ』に近い流れにして,起承転結を討論によって導き出させようとした。
この討論を中心として,3・4年生複式学級で研究授業を行ったのである。
実際に授業にかけてみた得たのは,

起承転結の分け方について討論させるのは,避けた方がよい。

という結論である。
理由は二つある。
第1に,子どもはいろいろな考え方をしてくるために,たいへん時間がかかってしまう。
第2に,子どもたちが意見をまとめようとしても,納得しない子どもが残るために,結局教師が出てこざるを得なくなる。
このような授業は,よほど適切な教師のサポートがなければ,緊張感のないものになってしまう。
もっともこれは,現在の私の技量のレベルでの結論であるから,どの教室でもそうであるとは限らない。
ところが,『桃花片』型で,子どもたちの起承転結の分け方を教師が一人ずつ採点していくと,子どもたちは楽しそうに頑張るのである。
『ろくべえまってろよ』の授業では,このように『桃花片』型で起承転結を扱ったところ,子どもたちが何度も何度も挑戦してきた。
教師は素早く採点していくだけで,助言をあまり行わないのに,なぜこうなるのであろうか。
それは,子どもたち一人ひとりが「個別評定」されているからである。
向山氏の「阿波踊り」等の指導原理と同じである。向山氏の「阿波踊り」の指導では,不思議なことに,大人が子どもと同じように必死になってしまうのである。これは,

「個別評定」が,一人ひとりを動かす原則だからである。

ただし,教師は「個別評定」の尺度を明確にもっていなければならない。
私は,次のように起承転結をとらえた。(教材は旧日書版を使用)

起  最 初 ~51頁四4行
承 51頁5行~61頁3行
転 61頁4行~64頁5行
結 64頁6行~ 最 後

これは,一つの分け方であるから,他の分け方に対する目配りも必要である。
例えば「起」は53頁5行までとも考えられるし,「承」は64頁5行までとも考えられる。
実際に,授業では,このように分けてくる子が現れた。
このような子には「なるほど,そういう分け方が確かにできると先生も考えた。すごい分け方だ。だけど,今はちょっと違った分け方をみんなで勉強したいから,君ももう一つ考えてみてくれないか」と助言していった。
個別評定では,こういうことが可能だから,子どもも頑張るのである。
あとは「転をどこからにしているか」といったワンポイントを見ていくだけで評定できる。
直感で「10点満点の2点」と素早く採点していくのである。

4 解をきちんと示す

しかし,いつまでもできない子がいるはずである。
だらだらといつまでもやらせては,この子たちがかわいそうである。
私の場合,4分~10分の間に半数の子が満点になったので,教師が解を示すことにした。
起承転結を初めて知った6年生の中に,三カ所すべて違っている子が3名いた。
再度,起承転結について説明し,解と根拠を示した。

起は,初めに「穴に落ちているろくべえを見つけた」部分になります。
承は,次から次に「ろくべえを励ましたり,他の人に助けを求めたりしている」部分です。
転は,ところが「もうだれもあてにできなくなって,自分たちで名案を考えた」部分です。
結は,とうとう「名案によって,願いがかなった」部分です。

一応このような分け方しておくことを伝えた。

5 いくつ事件があるかを問う

次に,以下の発問・指示をした。

発問2 事件ごとに線を引きながら読みなさい。
指示3 この物語は,いくつの事件に分けられますか。

ところが,子どもたちはここでも戸惑った。
全体を二つに分ける子から,最多の十六に分ける子まで,てんでばらばらになったのである。
そこで私は,先の発問・指示を言い替えてみた。
すると「なんだ,そういうことか」と言って,子どもたちは書き直しを始めた。
今度は,六から十までの5通りに分かれたのである。
さて私は,先の発問・指示を,どのように言い替えたのであろうか・・・・・・・・

6 発問を修正する

次の発問に,子どもたちは戸惑っていた。

発問2 この物語は,いくつの事件に分けられますか。
指示3 事件ごとに線を引きながら読みなさい。

私は「事件」という用語に抵抗があると見てとった。
そこで「事件」を「お話」と言い替えてみることにした。

発問2' この物語は,いくつの「お話」でできていますか。
指示3' 「お話」のまとまりごとに,線を引きなさい。
 

このようにすると,子どもたちの戸惑いはなくなった。
子どもたちは「六」から「十」までの,5通りの考え方に分かれた。
さて,これをどう扱っていくかである。

7 八つの事件に分けさせる

ここで考えられる選択肢は,およそ次の五つである。

① 「起承転結」同様,教師のところに持ってこさせて評定する。
② 自由に発言させ,討論させる。
③ 「六」の子から順に理由を発言させていき,意見の違いをはっきりさせてから自由に討論させる。
④ 最初の「お話」はどこまでなのかを発表させ,検討させる。
⑤ 最初の「お話」は,何の「お話」なのかを発表させ,検討させる。

他にもよい選択肢があるかも知れないが,ここではこの五つについて検討してみる。
①は駄目である。「起承転結」のように「四つに分ける」作業の評定とは違い,ここでは「いくつに分けるのか」すらもはっきりしない作業の評定になる。時間がかかり過ぎることは明白である。
②も駄目である。子どもの発言がばらばらに出てくる。よほど鍛えられているクラスならば,論点の整理を行おうとするであろう。しかし,やはり「傍観する子」が生じるはずである。
③も駄目である。理由を発表させるまではよいが,討論となると,これまた論点がばらばらに出てきて収集がつかなくなる。
私は最初,④を選択した。しかし,これもすぐに駄目だと分かった。「最初の『お話』はどこまでなのか」は,一見論点がはっきりしているようであるが,実は次の二つの論点を含んでいる。

④ーA どこで切れるのか?
④ーB 何の話なのか?

二つの論点を整理しながら検討する作業には,かなりの無駄が生じる。
そこで私は,⑤の選択肢に変更した。

発問3 最初の「お話」は,何の「お話」ですか。

「何の『お話』か」という「単位」をはっきりさせれば,子どもたちは「どこで切れるか」についてあまり混乱することはない。
発問3についても,子どもたちに意見を出させた後,自由な討論はさせないことにした。
教師との問答で,多少の議論を引き出しながら進めていく方が緊張感を維持できるからである。
こうして,かなり教師の意見も反映させ,次の八つの「お話」に分けるようにまとめた。

A ろくべえが穴に落ちた話(51頁4行まで)
B ろくべえをどうにもできなかった話(53頁5行まで)
C お母さんにたのんだ話(56頁10行まで)
D 歌をうたってあげた話(58頁2行まで)
E シャボン玉ではげました話(60頁1行まで)
F ひまそうな人にたのんだ話(61頁3行まで)
G クッキーを穴におろした話(64頁5行まで)
H ロープを引いた話(最後まで)

8 事件ごとに要約させる

次に,八つの事件を,一つずつ要約させていった。

指示4 最初の「お話」を,20字以内に要約してノートに書きなさい。

書いた子から,教師のところに持ってこさせ,要約文を板書させていった。
八名程度が板書したところで,教師が一つずつ,理由をあげながら採点していった。
前年度に要約の授業を受けていた5年生と違い,6年生は初めてだった。

説明2 要約する時には,文章の中から大切な言葉を三つ選んで,文を作ります。
     その文は,三つの中で一番大切な言葉が最後になるようにします。

このようにして扱っていくと,次第に6年生も慣れてきた。
四つ目を扱う頃には,全員が,大体同じ要約文を書くようになった。
教師の要約文として,子どもたちに提示したのは,次の文である。

A 穴に落ちたろくべえを見つけたみんな。
B ろくべえをどうにもできないみんな。
C ろくべえを助けずに帰った母親たち。
D ろくべえに歌をうたってあげたみんな。
E ろくべえにシャボン玉をふいてあげたみんな。
F ろくべえを助けなかったひまそうな人。
G クッキーをかごに入れ穴におろしたみんな。

9 中心題材を考えさせる

「中心題材」とは,この物語に繰り返し出てくる出来事である。
これは「ろくべえを助ける」行為ということで,一致した。

※1 『「分析批評」で授業を変える』(明治図書)P.185~195


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