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TOSSランドNo: 7348358 更新:2012年12月16日

飛び込み「エネルギー授業」の心得覚え書き


1999年8月に,佐賀県鎮西町の少年自然の家で,飛び込み授業を行った。
九州通産局主催による2泊3日の「エネルギー教室」で,対象は福岡県・佐賀県の5・6年生,各50名ずつの計100名である。
2日目の昼前に,60分間「エネルギー」の授業を実施という依頼であった。
その授業を行うに際して,私が学んだことを記しておく。

① 子どもの状態をよく見極める。

 当然のことであるが,「飛び込み」の授業では,次の二つが見えない。
 1)子どもたちが集団としてどのような状態であるのか。
 2)どの子がどのような状態であるのか。
 上の二つが見えないと,授業をどのように進めるかの判断がつきにくい。
 したがって,簡単な応答で探りを入れながら授業を進めていく必要がある。
 しかし,これには,かなりのエネルギーを要する。
 したがって,できるだけ子どもたちの状態を前もって知っておくために,会場入りを早くした方がよい。
 私の場合,今回は,私の前に1時間授業があったので,子どもたちの様子を横から見て状態をつかむことができた。問題のありそうな集団も,ある程度把握できた。これができていなければ,おそらく倍のエネルギーを要したはずである。
 できるだけ早く子どもと接して,状態をよく見極める必要がある。

② 自由に選択可能な“準備”をする。

 子どもの状態を見ながら,私は授業の展開を考えていった。
 つまり,許された時間は30分間弱,その中で授業を構成するのである。
 この力は絶対に必要だ。事前に子どもの状態をある程度つかむことができたとしても,直前に何があるか分からない。今回のように続きの授業の場合は,前の授業を受けて内容を構成する必要も出てくる。
 したがって,その授業で扱う素材を,いくつも用意しておかねばならない。
 いくつも用意した素材の中から,その場でよりベターなものを選択して配列し,授業にかけていくという形になる。今回は,10以上の素材を用意していった。その中から,六つほどを選んで授業したのである。
 最初から,がちがちの構成でいっては,融通が利かない。不慮の事態にも対応できなくなる。そういう教師の狼狽は子どもにダイレクトに伝わるので,間違いなく授業は停滞する。
 今回は,前の授業を見ながら,素材の配列を考え,資料を選択し,コピーの必要があるものはその場で随時スタッフの方にお願いしていった。かなり恵まれた環境であったと言える。(無論,コピーが可能というのは,その場で私に提示された条件だったので,それをふまえて内容を構成したのである。なければ別の授業を行ったはずである)

③ “授業の原理原則”を散りばめる。

 これは,普段の授業(修業)がものを言う。
 「一時に一事」や「個別評定」など,最低十の原則は厳守しなければならない。曖昧な空気をつくってはならないのである。曖昧な空気をつくった途端に,集団のベクトルは崩壊へと向かう。「たとえそれが間違った方針であっても,方針が無い状態よりは良い」というのが,集団を動かす場合の鉄則である。これは,一朝一夕にできることではなく,間違いなく自らの“普段の状態”が出てしまう。
 「原理原則」というのは,運動(スポーツ・格技)で言えば「基本」なのである。これができていなければ,いくら応用技を出そうとしても無理である。勝負の場で“ビギナーズ・ラック”を期待するのは甘い。どんな運動の名人・達人も,毎日毎日「基本」を繰り返し練習し,しかも口を揃えて「それが最も大切だ」と言っている。
 授業とて同じである。普段の授業・毎日の授業で,厳しく自己を律し,「授業の原理原則」をふまえていたかどうかを振り返っていかなければ,到底勝負の場で瞬間的に応用できるものではない。
 逆に,そうやってヤキの入った腕をふるっていけば,それは自然に「原理原則」を散りばめた授業になり,子どもを動かすことができるのである。

④ 「切り返し技」を獲得する。

 子どもというものは(大人もだが),相手の出方を見るために,様々な形で「ジャブ」を出してくるものである。集団を背景としてそれをやる場合が,いわゆる「アドバルーン」である。
 どちらも,教師は的確に捌いて,力の差を見せつけねばならない。
 これは「授業の原理原則」とは別のカテゴリーの技術である。「授業の原理原則」のように,きちんと示されてはいない。これを明らかにしていくのは,私たちがやっていくべき仕事である。
 今回の授業でも,1割程度の子は,露骨に「もうやりたくないよ」という態度を示してきた。私は子どもたち全体を「授業の原理原則」で統治しながら,そういう子どもたちには個々に「切り返し技」で対処していったのである。
 私が使った「切り返し技」は,粗く言って次の四つである。
 1)応答言い替えの技術(応えているふりをして別のことを言う)
 2)ほめ殺しの技術(ことさらに理屈をつけてほめる)
 3)瞬時叱責の技術(短く瞬間的に叱る)
 4)無視の技術(相手にしない)
 他にも,この授業では使わなかったが,「問い返しの技術」や「問い広げの技術」等もある。こういった技術を,自分なりに自覚的にもち,磨いておかなければならない。やはり毎日の授業・実践こそが,教師の「基礎」なのである。

⑤ 記録をとり,分析を加える。

 今回は,山西浩文氏が同行してくださり,授業をVTRに撮ってくださった。
 NHKも番組撮りに入っていたのだが,やはりプロの教師が撮っている方が,こちらとしては意識もするし,身にもなる。
 大切なことは,「飛び込み」で実践したことを,そのままやりっぱなしにしないで“メタ化”することである。VTRに撮って見る。あるいは記録に起こす。さらにそれを分析する。できればそこから「原理原則」や,ここに記したような「留意点」を抽出する。ここまでやらなければ,腕は上がらない。
 およそどのような仕事のプロでも,自分の仕事を“やりっぱなし”ということはないはずである。管理されることに慣れたサラリーマンは,上司から命令されなければ,自らの仕事を“メタ化”することはない。しかし,本物のプロは違う。自らすすんで,自分の仕事を切り刻み,血を流しながら“メタ化”を進めていくのである。そうすることによって,腕を磨いていく。そのような方法でしか,自らの腕を磨いていくことはできないことを,本物のプロは知っているのである。だからこそ,「プロ」はプロたり得るのだ。


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