TOSSランド

コンテンツ登録数
(2019/02/17 現在)

21596
TOSS子どもランド TOSSオリジナル教材 TOSS動画ランド TOSSメディア TOSS-SNS TOSS公式(オフィシャル)サイト
TOSS子どもランド
TOSSランドアーカイブ
TOSSランドNo: 1145149 更新:2012年12月12日

アイヌの英雄・シャクシャインから人権問題を考える


発問1:

北海道に人が住み始めた年を生年月日としましょう。では、北海道は今年で何歳でしょうか。

 「200歳ぐらい」という声がすぐに返ってきた。
列指名で10人の生徒に聞いた。100歳から500歳の間であった。生徒は「北海道の歴史=和人の歴史」または、「北海道の歴史=明治以降の歴史」ととらえたようであった。和人が移住したのは、鎌倉時代前後と言われている。それ以前から、北海道には自然と共存するアイヌ民族の豊かな生活があった。

ここで、土器の破片を提示した。別海町内にも、アイヌの人々が生活していた証拠ともいうべき遺跡がある。別海中学校の敷地内には、浜別海遺跡がある。かつてはグランドから土器の破片が多数出土した。生徒には、次の3点を簡単に説明した。
   (1)北海道に人が住み始めたのは、2万年前であること。
   (2)和人が住み始めたのは、鎌倉時代以降であること。
   (3)和人が移住する以前から、アイヌ民族が豊かな自然の中で生活していたこと。

発問2:

北海道には、アイヌの人々が住んでいました。では、現在、アイヌの人々は道内に何人ぐらい住んでいるでしょうか。

 「今もいるの?」という声が聞こえてきた。
列指名で10人の生徒に聞いた。100~5000人であった。北海道に住んでいながら、アイヌ民族に対する知識が皆無に等しいのが現実である。最近の北海道の調査(1993年)では、北海道に住むアイヌの人口は、23830人とされている。実際には混血が進み、実態の把握は難しいと言われている。

次の発問で、シャクシャインに注目させることにした。

発問3:

尊敬する人を1人、頭に思い浮かべてください。

列指名で、10名の生徒に聞いた。
野球部の生徒は「松井選手」と答えた。理由を聞いたところ、「実力もあり、たくさんの人から愛されているから。更に、メジャー・リーグ挑戦という大きな夢に向かって進んでいるから」と発表した。その他には、「両親」「小学校の先生」「部活の先生」という答えが返ってきた。

指示1:

多くの人から尊敬されている人を「英雄」と言います。それでは、アイヌの人々が尊敬する「英雄」を紹介します。

静内町真歌公園のシャクシャイン像をプロジェクターで提示した。
生徒の視線は、スクリーンに集中した。
1669年、シブチャリ(静内町)のアイヌの指導者シャクシャインの檄文によって、各地でアイヌが蜂起した。
松前藩の収奪に対して、シャクシャインの蜂起は起こるべくして起こった。この蜂起の発端は、シベチャリ川(静内川)のイオル(漁漁圏)をめぐってシュムウンクル(西の人々)の指導者オニビシと、メナシウンクル(東の人々)の指導者カモクタインとの抗争であった。
その後、オニビシを煽動する松前藩とカモクタインのあとを継いで指導者となったシャクシャイン率いるアイヌ連合軍との全面戦争に突入した。オニビシを倒したシャクシャインは、シュムウンクルとも大同団結し、矛先をアイヌ民族最大の敵である松前藩に向けた。

指示2:

名前をシャクシャインといいます。今から約340年前に活躍していた人です。この人の名前を聞いたことがある人は手を挙げてください。

手は上がらなかった。
シャクシャインは、中学の歴史教科書8社、すべてに掲載されている。しかも、先のシャクシャイン像がカラーで載っている教科書は5社もある。小学校でも、教育出版・東京書籍・大阪書籍の3社の教科書に写真入りで紹介されている。
北海道では、アイヌ民族の歴史を教えてこなかった現実がある。
教科書で取り上げていなら、授業をしていないのである。教師の責任は重大である。

発問4:

なぜ、アイヌの人々はシャクシャインを「英雄」として尊敬しているのでしょうか。

考える時間を3分間与えた。
3分後、手をあげた生徒7名に発表させた。  
     (1)自分たちの生活を守るために、松前藩と戦ったから。
     (2)アイヌ民族の地位を高めたから。
和人がアイヌの人々に対して搾取を行っていたことは小学校で学習したという。そこで、生徒が知っていることを発表させた。
     (1)アイヌの冬の食料となるサケを大量に捕った。
     (2)アイヌをただ同然で労働させた。
     (3)アイヌが大切にしていた川を砂金取りで荒らした。
その後、次の4点を簡単に補足した。
     (1)和人とアイヌとの間には、武力に大きな差があったこと。
     (2)和人はアイヌの生活基盤である川を荒らしたこと。
     (3)シャクシャインは、松前藩の謀略によって殺されたこと。
     (4)シャクシャインの死後、松前藩はアイヌに対する支配を強化したこと。
生徒は、静かに私の説明を聞いていた。

発問5:

シャクシャインの戦いから、300年以上が過ぎました。アイヌの人々への差別はなくなったでしょうか。

この発問に、生徒は答えなかった。教室には緊張感があった。
資料を配った。
『銀のしずく アイヌ民族は今』(北海道新聞社 1991年)の「大人から伝わる差別」(14~16ページ)を、私が読んだ。

説明1:

シャクシャインは差別と戦い、アイヌ民族の存亡をかけて戦いました。しかし、その意志は達成できませんでした。
それから340年が過ぎ、大きな1歩を踏み出しました。

スクリーンに、萱野茂さんを映し出した。
日本最初のアイヌ民族出身の国会議員である。
1994年、参議院議員比例代表で当選を果たした。
1996年には内閣官房長官の私的諮問機関である「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」(座長 伊藤正巳)がアイヌの「先住性」「民族性」を認めた。わずかながらも、アイヌの人々の声が政治に反映されるようになった。

説明2:

シャクシャインの意志は完全に達成できたとは言えませんが、萱野さんの活躍で大きな1歩を踏み出しました。
そして、アイヌ民族の長年の願いであった新しい法律が、平成9年に制定されました。

『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』(アイヌ文化振興法)の第1条(目的)をスクリーンに提示し、全員で声をそろえて読んだ。
 

第一条(目的)  この法律は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。

《生徒の感想》
新聞記事を読み、とても疑問に思った。どうして、北海道に先に住んでいたアイヌの人々が差別されなければならないのか。今までの歴史は違うかもしれない。考え方や生き方も違うかもしれない。でも、人間として共に生きている。大人から広まる事実は、子供の生き方に大きな影響を与えると思った。大人がアイヌの人のことを偏見の目で見るから、子供も同じことをする。差別は絶対にいけない。300年前とくらべて、全然進歩していないと思った。差別は、この問題に限ったことではない。新聞に取り上げられない差別は、私たちの周りにたくさんある。小さな差別をなくしていくことで、この問題は解決していくと思った。

私は差別が嫌いです。好きな人はいないと思うけど。アイヌの人にだって自由に生きる権利がある。ほんの少し生活の仕方が違って、言葉が違っていただけなのに。人数の多い少ないというだけでアイヌの人々を迫害してきた歴史を、もっと深く考えてみる必要があると思う。新しい法律も、そういった気持ちがなければ意味がないと思う。いつになったら差別がなくなるのだろうか。「考え方や生き方が違う」という当たり前のことを、すべての人が理解できる未来を作っていきたいと思った。


0回すごい!ボタンが押されました

コメント

※コメントを書き込むためには、ログインをお願いします。
New TOSSランド