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TOSSランドNo: 1156792 更新:2014年01月14日

「力のある資料」で創る中学年の道徳授業


四 「いじめ」について考える                   師尾喜代子

1 校内研究授業

研究のスタートは、一九九六年の教育技術学会の石黒先生の授業を参観したことから始まった。
 読むだけで緊張する教材の持つ力、教材から導きだされる心の叫び。加えて、石黒先生のたくみな討論の授業。自分のクラスでどうしてもやりたい授業だった。また、そうした教材があることを校内の先生方に示したかった。
 校内での、研究授業の実践を報告する。校内研究のテーマは「考える子の育成」だった。力のある教材は、読むだけで、児童に考える場を生むと考えた。道徳の授業が陥りやすい「たてまえ」が飛び交うことは避けたかった。
 校内研究は、学年ごとに提案することになっていた。学年提案の研究仮説は、「力のある教材は考える子を育てる」とした。研究テーマに迫るための、よい教材である。
 基本は、石黒先生の授業の追試であるが、研究テーマとのつながりを考え、修正した。
 「わたしのいもうと」の作品をどこで区切り、その先を予想させるか、意見が分かれた。かなりの検討の結果、結局、石黒先生の区切ったところと同じになった。区切る場所で、また違った実践が考えられる。
 校内研究の指導案(抜粋)は次の通りである。

5 本時の展開

学習活動と主発問

1 資料「わたしのいもうと」を読む。

発問1:

 「わたしのいもうと」を
 読んで、分かったこと、気が付いたこと、思ったこと、考えたことを書きなさい。
 3つ書いたら、持ってきなさい。

3 指名なし発表をする。
 

指示1:

 友達と同じ意見の時は手をあげます。
 意見が違ったら、その場で反論してください。

指示2:

4 資料の後半を予想しなさい。
  予想を一行で書きなさい。
  意見を黒板に書きなさい。

 同じ意見は名前磁石を貼らせる。

5 3つの意見について討論する。

6 後半の資料を読む。

指示3:

7 読んだ後の感想を書きなさい。

8 発表する。

指示4:

9 「いじめ」についての一行詩を書きましょう。

10 黒板に書かせる。

11 発表をまとめとする。

6 本時の評価    

2 本時の展開
① 学習活動1----------「読む」

 教材「わたしのいもうと」(六八ページ参照)を配布したと同時に、子どもたちは読み始め、時間が経つとともに、教室は、静まりかえった。外のかすかな風の音が聞こえるほど「シーン」となった。
明らかに子どもたちを引きつける力が「わたしのいもうと」にはあった。
読み終わると、教室には、作品の切なさ、やりきれなさが立ち込めた。
一人一人の黙読の後、教師が読んだ。
心にすうっと入っていくためには、音読あ、流れるように、淡々と読むのがよい。

② 指示2----------教材文「わたしのいもうと」の読み取り

指示5:

「わたしのいもうと」を読んで分かったこと、気が付いたこと、思ったこと、考えたことを書きなさい。
ノートに箇条書きで書きなさい。

 教材に関するすべての読み取り、感想を受け入れるためである。子どもたちは、よく活動した。活動の確認と意欲を高めるために、三つ書けたらノートを持ってこさせた。作業時間は、五分である。多い子どもは、二〇近く、かけていた。ノートを店に来ていない子の確認のために、一つでも書けたら持ってくるよう指示をだした。一つも書けない子はいなかった。普段の写真などの読み取りより、一文が長いため数が少なかったと思われる。また、このような形で文の読み取りをさせたことがなかったが、書き出す場面が、その子の心の動いたところであり、その子の課題である。

③ 学習活動2----------教材文読み取りの指名なし発表

 ノートに書いた読み取りを指名なしで次々と発表させた。
 子どもたちは、ノートに書いてあることは安心して発表する。
 書いた数が少ない人から発表させる。クラスは発表が活発で、全員発言できた。
 この指名なし発表については、協議会で多くの意見をいただいた。
 
 長所1 数多くの子どもが発言できる。 2 自ら授業に参加する雰囲気ができている。
 
 短所1 教師がタイミングよく出ていきにくい。 2 子どもの意見を効果的に取り上げられない。 など
 
 授業者の私としては、子どもの意見を取り上げるつもりは全くなかった。
 ただ、残念だったのは、いつもより、子どもたちの発表したい気持ちが強すぎて、友達の意見を聞く余裕がなかったことだ。
 指名なし発表から、意見のやりとりが生じてほしかった。

 反省をもとに、向山先生(法則化運動代表)に教師が、発言をかみ合うよう整理し、発言させたらよかったか、尋ねたところ、
 「そんなことしたら、授業のスケールが全然小さくなってしまう。かみ合わなくても、実践した通りでよい。子どもにせまい活動をさせない。もし、かみ合わせる必要があるのなら、発言したことを、もう一度考えながら、かみ合わせるなり、深めるなりすればよい。
 一時間の授業なら、実践したとおりでいいですよ。」
とのことだった。

④ 学習活動4----------資料の後半を予想する

これまでも、教材の先を予想させる授業はよく展開してきた。資料の、様々な根拠から導き出す予想は、教材の読み取りと深く関わっている。道徳の場合、子どもの生活経験から学んだことから出てきた予想である。
 予想を、一言でまとめ、黒板に書かせた。黒板には、一八の意見が、書き上げられた。意見が書けなかった子も
 (例)1 学校にくるようになる。
    2 友達が悪かったことに気づきあやまり、妹は、元気になる。
    3 妹が強くなって、学校に来れるようになる。
などが、主な意見である。後半の予想は、すべて明るい方向への意見ですくわれた。願いの表れである。

⑤ 学習活動5---------後半の-教材文を読む

子どもたちは、教材を配られるのを待ちかねるように静かに読み始めた。前半を読んだ以上に静かになった。読み終わった子どもから溜め息が漏れた。「ええっ、本当に?」小声が漏れる。教室全体が、悲しみに包まれた。子どもたちの表情を見た時、これだけで十分だと思った。
 「本当にあったことなんですか」
 子どもたちの質問が私に飛んできた。その言葉の裏には、「うそであってほしい」「本当だとしたら、ひどすぎる」という子どもたちの気持ちが表れていた。

⑥ 学習活動6----------読んだ感想を書きなさい(ノート)

指示6:

 感想を書いて下さい。私が、妹だったら、いじめた子だったらと立場をはっきりさせて書いて下さい。

子どもたちは、あまり、躊躇することなく、書きはじめた。時間も三分ほどの活動である。
 予想に照らして書かれた感想が多かった。
(例) 1 なぜ、いじめた子たちは、気付かないのだろう。
  2 先生が、いじめた子を連れていって謝らせれば、死ななかったのかもしれない。
3 反省文を書いて送れば良かった。
4 ほかの子どもたちが、一緒に遊ぼうと誘えば良かった。

⑦ 学習活動7----------今日の授業で勉強したことを一行詩に書きましょう

(例) 悲しいいじめ
ひどすぎるいじめ
いじめは、友達の命をうばう
いじめられていたら仲間になろう

3 研究授業の反応

 研究協議会では、教材の素晴らしさが話題となった。
 授業を参観した教師からは、「わたしのいもうと」が力のある教材であり、テーマ「考える力」を育てる教材であるとの発言をいただいた。
 書くことと発表することを中心に組み立てた授業である。教師の研究授業の感想は、次の通りである。
 
 1 発表の機会が四回あり、一時間フルに考えている様子が感じられた。
 2 授業の流れが分かりやすく、最後はあっさりと終わったが、子どもたちの心に深く残ったと思う。
 3 指名なし発表などの方法をつかって、考えが深まっていった。
 4 友達の意見にもよく耳を傾けていた。学級全体の雰囲気があたたかかった。
 5 一人ずつがしっかり自分の考えを持っていて、よく発表できた。
 
 講師(重松清文先生)からも、教材のよさ、授業についての指導を受けた。
 
 1 「妹」「姉」「いじめた子」「母」と様々な立場に思いを重ねることができ、考えを深める上でも良い教材である。
 2 一時間の授業は、「いじめは、いけない」と言える自分をさがす旅をした。
 3 自分さがしの旅は、これで終りではない。いじめの場面にでくわした時、「わたしのいもうと」を思い出し、救うことができない自分と「いじめてはいけない」と言い切った自分を見つけ、また、自分さがしの旅にでることになる。
 答えが決まっている説教的教材でなく、子どもの心に届き、討論にたえ得る教材の開発が必要である。

〈引用文献〉
TOSS道徳「心の教育」5心に響く「 力のある資料」で生き方を教える道徳授業(明治図書)より


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