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TOSSランドNo: 5735021 更新:2014年01月01日

授業導入で子どもの心をつかむコツ 中華人民共和国の導入 ~人民元を教室に持ち込む~


20か国の紙幣を教室に持ち込んだ。
教科書など、授業に使う道具をカゴに入れて持ち運んでいるのだが、そこに見慣れない封筒を発見したA君。
普段の授業では、ダラ~としていることが多いのだが、この日は違った。「見せて!」「さわらせて!」と興味津々。
その声につられて、たくさんの生徒が集まってきた。A君に封筒を渡すと、すぐに封を開いた。外国の紙幣を見つけてビックリ! 
授業が始まる前から、「今日は楽しい授業になりそうだ!」と確信した。
これから始まる50分間の授業に胸を躍らせている中学教師が、どれだけいるだろうか?
導入を意識して授業づくりをすれば、教師自身の意識が変わる。授業を活性化させたいのであれば、ここからスタートさせたい。それだけで授業が変わる。

「まだ、チャイムが鳴っていないけど、授業を始めてもいいかなぁ?」と聞いたところ、A君をはじめ、多くの生徒から「いいよ!」という声。「始めよう!」と呼びかけると、全員が席に着いた。
普段なら、チャイムが鳴ったのを合図に座り始める学級である。これこそ、モノの威力である。
紙幣を1枚1枚見せていった。
これらは、私が海外旅行に行った際に集めたものである。20か国分あるので、それを紹介するだけでも1時間の授業になる。
まずは、アメリカの1ドル紙幣を見せた。その瞬間、「あ、ワシントン大統領だ!」という声が上がった。確かに、紙幣の中央に初代大統領であるジョージ・ワシントンの肖像がある。
紙幣には生徒が持っている情報を引き出す力がある。まさに、超一級の資料である。それだけで、導入は成功したと言える。
導入に成功すれば、生徒は身を乗り出して発言するようになる。私はその発言を笑顔で聞いていればいい。中学校にありがちな「教師主導型」の授業とオサラバできる。生徒が進んで発言するからだ。
机に突っ伏している生徒もいなくなる。生徒指導の側面から見ても、理想的な授業展開が可能となる。授業が、いい方向に進んでいく。
外国の紙幣を見せると、決まって次の質問を受ける。

それ、いくらの価値があるの?

外国の紙幣を日本では使えないことぐらいは、中学生であれば知っている。
だから、その紙幣を日本円に換算すると何円になるのかを知りたがる。紙幣は身近な存在だからこそ。知的好奇心が高まる。
これこそ、3年生の公民的分野で学習する「外国為替相場」の導入となる。いい導入は学年の枠、分野の枠を越える。
 この場合、すぐに答えてはもったいない。一端、生徒に返すことで、更に知的好奇心をかき立てるのだ。

発問1:

何円だと思いますか?
予想をノートに書きなさい。

100円、250円、50円…という声が上がる。
この時、生徒は間違えを怖れずに発言する。このチャンスを生かしたい。私なら、どんどん発言させる。発言を繰り返すことで、間違いに対する敷居が低くなる。次からの授業に役立つことになる。
1つの発言を基準に、全員に投げかけてみる。こうした雰囲気の中でも発言できない生徒を、授業に巻き込むためだ。

指示1:

100円を基準に考えましょう。
100円よりも高いと思う人? 
100円よりも安いと思う人? 
100円ジャストだと思う人?

挙手を求め、必ず人数を確認する。全員に挙手させるためだ。
その目的は正解者を確認するためではない。全員を授業に参加させるためだ。そして、3年生になっても学級の全員が進んで挙手する集団に育てるためだ。そのための布石でもある。
正解は80円だった。
「100円以下」に手を挙げた生徒はガッツポーズをして喜んでいた。
学力が低く、普段の授業で活躍できない生徒ほど、大袈裟に喜ぶ。中学生でも、正解はうれしいのだ。それを知っている教師は、目立たない生徒を活躍する場を意図的に用意する。だから、授業の雰囲気が明るくなるのである。
ここで大切なことは、教師が事前に外国為替相場をチェックしておくことだ。この程度のことも、教師は意図的に進めなければならない。
「80円ぐらい」という説明では、生徒からは尊敬は得られない。社会科教師であれば、「昨日の夕刊によれば、80円79銭でした」「朝のニュースでは、80円21銭と伝えていました」と正確に伝えたい。
それだけで、生徒は「先生、すげ~!」となる。知的な教師は生徒から好かれる。
こうしたやり取りをしながら、中国の「1元」紙幣を提示する。

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発問2:

どこの国の紙幣ですか?

「中国!」と返ってくるが、すぐに「正解です」とは言わない。
授業なのだから、そう考えた根拠・証拠・理由が必要になる。

発問3:

証拠は、どこにありますか?

紙幣の左上に「中国人民銀行」という6文字がある。これこそが根拠である。
「壹圓」の部分を指さして発問する。

発問4:

何と読みますか。

「壹」は「いち」と読むことは、すぐに気づいた。紙幣の四隅に「1」とあるからだ。問題は「圓」だ。くにがまえの中に「員」とある。勘の鋭い生徒は「イン」と読んだが、正解ではない。
日本語と中国語には発音に違いがある。父親が中国に旅行したことがあるという生徒が正解を発表した。「ゲン」と読む。
通常、日本では「圓」を「元」と表記する。
「圓」は、東アジアの各国において使用されている通貨の単位である。(「圓」は元来、「まる」を意味する文字だという)
「圓」は中国では「元」、日本では「円」と簡略化された。つまり、中国の「元」と日本の「円」、さらに韓国の「ウォン」も起源は一緒である。
ちなみに、日本円に換算すると約15円である。

発問5:

この紙幣の裏には、中国にある有名な建造物が描かれています。
それは何ですか。

正解は「万里の長城」である。
紙幣には、その国を代表する建造物・風景・動物などが描かれる。
中国も例外ではない。

発問6:

裏面の上に書かれている「ZHONGGUO RENMIN YINHANG」は中国語を英語で表記しています。
これらを漢字にすると、どうなりますか。
紙幣表面から見つけなさい。

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正解は「中国人民銀行」である。
この紙幣の発行元を示している。「紙幣表面」と限定することで、すべての生徒が答えを発見することができる。
このように、考える幅を限定することで、効率よく授業を進めることができる。

指示2:

裏面には「中国人民銀行」の文字が、他にもあります。
見つけなさい。

この指示で、生徒の視線は裏面に集中した。これも「考える幅を限定する」という技術を応用している。
限定することで、隣同士で意見を出し合うことができる。教室がにぎやかになった。
「4か所あります」というヒントで、ほとんどの生徒は気付いた。
「万里の長城」の下の部分に、4種類の文字で書かれている。
左から、モンゴル語、チベット語、ウイグル語、チョワン語である。
いずれも、「中国人民銀行」と書いてある。

発問7:

なぜ、4種類の文字で書かれているのですか。
自分の考えをノートに書きなさい。

正解は「中国は多民族国家だから」となるが、模範解答にこだわる必要はない。
自分の言葉で書いていればいい。同様に、考えがまとまらなくても構わない。大切なことは「考えてみること」にある。中学校の社会科の授業は、時間との戦いである。先に進まなければ、教科書を年度内に終わらせることができない。割り切りも必要だ。

3分後、ノートに自分の考えを書けた生徒に発表させた。3分の1の生徒がノートに書いていた。
ある生徒が「国の中にいろいろな言葉を使う人が住んでいるから」と発表した。
もちろん、正解である。
挙手した生徒全員を発表させた。どの発表も○である。
その後、「多民族国家」という用語を教えた。今日の授業のキーワードであり。
先に紹介した紙幣(1元)の表面には「ヤオ族・トン族」の男女が描かれている。
他にも、「ウイグル族・イ族」(2元紙幣)、「チベット族・回族」(5元紙幣)といった少数民族が描かれていた。中国政府が少数民族を尊重していたことが、このことから伺える。
現行紙幣(1~100元)の表面には中華人民共和国の建国者である毛沢東の肖像画が描かれている。
授業では触れなかったが、ここから中国政府の意図が浮かんでくる。紙幣は深い情報を提供してくれる。


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