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TOSSランドNo: 2320027 更新:2013年10月11日

広い社会との接触が中学生を本気にさせる


「うちの生徒が迷惑をかけかもしれませんが、よろしくお願いします」
 日常的に問題行動が発生するその学校では、修学旅行中の見学先を最小限に抑え、移動にも貸切バスを利用しているという。
 問題ある生徒を《社会》から隔離することで問題を防ごうとしたのであろう。
 このような狭い発想からは、中学生に「社会を見る目」を育てることはできない。
 私は、逆の発想で中学生に「社会を見る目」を育てようとしている。
 学級集団を核とした《学級文化活動》として、中学生が持つ無限大のエネルギーを教室の外に向けて発揮させるのである。
 教室の外には、生徒のエネルギーを受け止める《広い社会》が存在している。
 こうした《広い社会》との接触こそが、生徒に「社会を見る目」を育てるきっかけになると考えている。
 学級替えをする前に、阿部さんの個展を私達の手で開催したい。そして、一人でも多くの人に阿部さんの絵を見てもらいたい。
 きっと、多くの人に《生きる喜び》を感じてもらえるはずである。
 中標津町在住の阿部俊明さんは、交通事故で頸椎を損傷して手足の自由を失ってしまった。
 生きる希望を失いかけていた平成9年2月、家族の強いすすめで花の絵を描き始めた。
 絵筆を口にくわえての創作活動である。
 家族の支えと絵との出会いで、阿部さんは生きる希望を持ち始めた。
 阿部さんとの交流は、平成9年9月にスタートした。
 「道徳」の授業で、阿部さんを取り上げたドキュメンタリー番組を見たのがきっかけである。
 「今まで授業の中で一番感動した」「阿部さんに会いたい」と生徒が感想に書くほど、深みのある授業となった。
 阿部さんの生き方が、中学生の心に響いたのである。
 授業の翌日、生徒の感想を1冊のファイルにまとめて阿部さんに届けた。
 そこから、染谷学級との交流が始まった。

 阿部さんから年賀状が届いたことをきっかけに、個展の実行委員会が学級に組織された。
 学級会で話し合われた組織ではない。《やりたい者が、やりたい時に、やりたいことをやる》実行委員会である。
 最初は、3人で活動が始まった。
 その後、「楽しそうだ」という理由で5人、6人とメンバーが増えていった。
 最終的には、20人以上の生徒が活動に加わった。
 部活動やスクールバスの関係で、放課後の活動時間は30分が限界であった。
 それでも、活動する教室には活気があった。
 パソコンが操作できる生徒はチラシ係、絵が得意な生徒はポスター係に立候補した。
 看板係、展示係、宣伝係などもできた。
 自然発生的にそれぞれの係が成立し、リーダーを中心に活動を進めた。
 私の仕事は、会場となる別海町図書館の借用と学校の許可、絵の搬入だけであった。

 平成10年3月16日、図書館で準備作業を行った。
 日曜日の午後、しかも吹雪にもかかわらず、3人の生徒が手伝ってくれた。
 阿部さんからお借りした160枚の絵から展示する30枚を選んだ。
 額縁に納めて展示用パネルに並べた。
 最後に実行委員が作成したポスターと看板を掲示した。
 何もなかったホールがだんだんと華やかになっていく様子は、その作業に携わった人にしか分からない喜びであった。
 たった1時間の授業から始まり、個展を開催してしまう生徒のエネルギーに、私は感心した。
 「冷めている」「意欲が無い」といわれる中学生を本気にさせる力が、阿部さんとの出会いにあった。
 500人以上が絵を鑑賞した。
 図書館ではさまざまな作品展が行われるが、「今までで最高の数です」と司書さんが教えてくれた。
 この様子は、北海道新聞・根室地方版で大きく報じられた。
 会場の出口に感想用紙を置いた。
 50人が感想を綴ってくれた。
 阿部さんに届ける前に、すべてを教室で読み上げた。
 「阿部さんの絵から勇気をもらいました」という感想のほかに、次のようなメッセージを生徒にいただいた。

①このようなすばらしい個展を開いてくれた中央中の皆さんに感謝します。
②中学生の手作りりというのがいいですね。
③皆さんが豊かな学校生活を送っている様子が伺えます。

 このような感想を聞いて、生徒誰もが笑顔になった。
 教室も明るくなった。
 中学生に対する《社会》からの評価は、マイナス面が多い。
 だから、教師は《社会》から生徒を隔離しようとする。
 生徒も、そんな《社会》から目をそらしてしまう。
 これでは「社会を見る目」は育つはずがない。
 ほとんどの中学校では正常な教育活動が行われ、生徒は心豊かに成長している。
 だからこそ、学級集団を核とした《学級文化活動》を通して、生徒のエネルギーを教室の外に向けて発揮させるのである。
 そうすれば、必ず《社会》からプラスの評価を受ける。
 認められれば、生徒は社会に目を向けるようになる。
 これは教師だけができる仕事である。
 個展開催から500日、第2回目の個展が同じ別海町図書館で開催された。
 もちろん、生徒の手による開催である。


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