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TOSSランドNo: 4934335 更新:2013年08月31日

4 貫くことのむずかしさ


 「相手のことを心から考えよう」というのは,五つの原則である。
 だれにでもわかる簡単な原則である。
 しかし,毎日の生活の中で,これを貫くことはむずかしい。
 例えば,「人のいる部屋でタバコを吸う」人がいる。
 「人がいる部屋でタバコを吸う」とは,大変に人迷惑なことである。
 「タバコの煙」は害そのものだからである。
 外国では「人のいる部屋でタバコを吸ってはならない」という法律を作ったところがあるくらいである。
 人のいる所では吸えないのだから吸える所は自宅ぐらいである。
 他はほとんどひっかかって警察に捕まってしまう。
 そんれくらい厳しい法律を作っている国がある。
 ところが,教師の中には,「人のいる所で平気でタバコを吸う」人がいる。
 「法則化運動」は,すべての会議などで,原則としてタバコ厳禁である。
 年とっていて,「もうしようがない」と思う2~3人をのぞいて,私もきびしくいう。
 ところがある時,宴会の席で「タバコを吸っている人」がいてびっくりした。
 その席には,教師ではないが女性もいて,一人は妊娠していたのである。
 私は,マイクを持って,禁煙していただきたい旨をお願いした。
 しかし,たった一人,大学の教師は「はじめに灰皿があった」という理屈でわざとらしくパイプの煙を立てた。
 いくらお願いしても駄目だった。
 妊娠している女性がいる部屋で,タバコを吸うなど,私には信じられない。
 問題外である。
 最も品性下劣な人間と思う。
 ところが,タバコを吸っているほうとしては「なぜ,タバコぐらいでそんなにさわぐのだ」と思っている。
 誰でも,自分の行為を正当化したくなるものなのだ。
 しかし「タバコ」は明白に,他人の害になる。
 人のいる前で平気でタバコを吸える人は,「相手のことを心から考えなさい」ということを教える資格にやや欠ける。
 「申し訳ありません。ごめいわくでしょうが,タバコを吸わせていただけませんか」というぐらいの心配りがほしいのである。
 タバコのように害が明白なことでさえ,このようにむずかしいものだ。
 私たちの身のまわりには,このようなことはゴロゴロしている。
 昔,新潟の村上小学校で,授業の研修フェスティバルがあった。
 全国から多くの人が参加をし,参加者は1300名にもなった。
 中央事務局の面々も,ほとんど参加をした。
 昼食の時,私は講師として校長室で食事をしていたのだが,用があってみんなが昼食をしている部屋に行った。
 私は,とんでもない光景を見た。
 中央事務局の面々が,ひとかたまりになって楽しそうに食事をしていたのである。
 私は怒気を含めて言った。
「身内だけで,何を同士打ちをしているんだ。やるべきことがあるじゃないか」
 私は怒りのあまり,それだけ言って引き返したが,さすがに石黒はすぐに理解して,直ちに指示を出したようだった。
 昨日,本を読んでいて全く同じような場面があった。
 中内功二〇〇〇時間語り下ろし「好奇心に勝るものなし」である。
 中内氏の本を初めて読んだが,共通することが多いのでびっくりした。
 この場面は,私と全く同じ心境であった。
 以下紹介する。

◆「悪名高い中内でございます」

 1987年(昭和62年)7月10日 中内は宮城県仙台市の紅陽グランドホテルで,東北六県の取引先の人たちを招いて,「中内と21世紀の商業を考える会」と称するパーティーを催した。一部が中内の講演,二部が懇談パーティーの二部構成で,会場は六百人以上の人で埋まった。
(中略)
 大高に紹介されて演壇に立った中内は,開口一番,「悪名高い中内でございます」と言って,満場jの笑いを誘った。
 「私はみなさんにお集まりいただくための人寄せパンダみたいなものでして,あとの懇談会のほうが重要でありますが,大高が仙台に来て話をしろと命じますので,お話させていただくことになりました」
 こうして和気あいあいの雰囲気の中ではじまった中内の講演は,たっぷり一時間におよんだ。
(中略)
 その夜,中内はできるだけ多くの人と話したいと思い,会場内を精力的に動きまわった。そのため,開会予定時間の七時三十分には,三百枚用意していた名刺がほぼ半分に減っていた。
 八時近くになっても,会場にはまだたくさんの招待客が残っていた。招待客は気さくに話のできる中内の周囲を取り囲んで,自分の番を待っていた。しかも,中内が招待客一人ひとりに丁寧に挨拶し,質問されたことに丁寧に応じていたため,通常のパーティーの二倍も余計に時間がかかった。
(中略)
 中内が最後の客を見送ったのは,八時半近くだった。
 ”事件”が起こったのは,中内が最後の客を送った直後だった。会場の入り口の外で,客に挨拶もせずにタバコを吸っていた商品本部の二人の管理職を見つけるや,中内は駆け寄って行って,ホテルの中に響きわたるような大声で怒鳴った。
「おまえら,なにしとんねん!」
 血相を変えて近づいてきた中内に気づき,二人はあわててタバコの火を消したが,遅かった。中内は両手で素早く二人の胸ぐらをわしづかみにするや,ぐいぐいと会場の中に押し込んでいった。

「おまえら,お客様を招待したんと違うんか。招待しておいて,放っておく,それでいいと思ってんのか。商人なら商人らしく,最後のお客様がお帰りになるまで,なぜちゃんと接待できんのや」

「申し訳あり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ません」
 二人は懸命に謝ろうとしたが,喉を締めつけられていたため,ほとんど言葉にならなかった。
「俺はおまえらみたいなのに飯を食わせているわけやない。商人というものを,なんと心得ているんや」
 中内は二人のネクタイをつかんで引き寄せながら,彼らの胸のバッジを取りはずそうとした。
「バッジを返せ。それは,おまえらみたいないい加減な人間につけさせるものやない」
 二人は中内の剣幕に,ただ驚きと恐怖で唖然とし,されるままになっていた。さっきから,止めに入ろうかどうしようか,と迷っていた大高が,飛び出して行って割って入った。社長が社員のバッジを取り上げたら,それこそ取り返しのつかないことになってしまうと危惧したからだった。
「社長許しやってください。あとは,私が責任をもって教育しますから。どうか勘弁してやってください」
「こんなやつら,ええねん,なにもわかってへんのやから。おまえら,バッジをはずせ」
 中内はなおも二人のバッジを取りはずそうとした。
「お願いだから,許してやってください」
 大高の必死の懇願に,中内も二人のネクタイを放し,手を下した。口から荒い息を吐きながら,なおも彼らをにらみつけていた。二人はすっかり怯えきり,青ざめた顔でうつむいていた。
 中内はなおも二人を怒鳴りつけようとしたが,思わず言葉をのみ込んだ。頭を垂れた二人の目から涙が流れ落ちているのを認めたからである。中内は黙ってその場から離れ,トイレに向かった。大高はその後を追い,トイレの前で待った。しばらくして出てきた中内に,大高はさらに懇願した。
「私が責任をもって,もう一度教育しなおしますから,ここはどうか許してやってください」
 中内の表情は平静に戻っていた。大高にうなずきなら,ニヤリと笑って言った。
「うん,あとはまかすから」
 中内はそれ以上なにも言わず,なにごともなかったようにその場を立ち去っていった。
 この”事件”のあと,中内は東京に戻ってからもしばらくの間,社員に対する躾の問題が脳裏から離れなかった。

 今,中央事務局は,どの会場でも多くの参加者から感謝のことばをいただいている。
 しかし,10年に近い「自己変革」の時代があったのである。
 道徳の中味を,教師自身が心がけることは当然のことである。


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