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TOSSランドNo: 1310114 更新:2013年07月25日

ブレーメンの音楽隊


研究

「漢字かな交じり絵本」
a. 読み聞かせ
b. キーワードになる漢字をカードにする(輪郭漢字カードをヒントにした漢字カードを作成)

仮説

知的な発達に遅れのある児童でも,本の読み聞かせをとおして,漢字を提示していくことにより,ストーリーの流れとともに,効果的に漢字を学習することができる。

対象児

2名(小学部3年生 知的障害養護学校教育課程代替の教育課程)

男児:脳性まひ
生活面:ほぼ全介助を要する 常時車椅子を使用 
学習面:ひらがなを拾い読みすることができる 絵本の読み聞かせやビデオを好み内容をほぼ理解することができる 会話はできるが2~3語文である 発音不明瞭

女児:脳性まひ
生活面:一部介助を要するがおおむね自立している 歩行器使用
学習面:ひらがなとカタカナを拾い読みすることができる 本の読み聞かせやビデオの内容を理解し,自ら絵本を読もうとする

学習形態

教師1名(富山)が児童2名に対して行った
グループ学習の個別指導の時間(週2時間 45分授業)で9時間

学習の流れ

第1時:絵本の読み聞かせ
第2~4時:各場面ごとに登場人物と話の展開をおさえる 使われた漢字を提示する
第5~8時:各場面ごとに「ストーリーカード」を並べ替える
第9時:各場面ごとに漢字カードをヒントにしながら,ストーリーを話す

目的

○絵本『ブレーメンの音楽隊』の読み聞かせをとおして,ストーリーの中で使われている漢字を読むことができるようになる。
○漢字をヒントにして,ストーリーのあらすじを話すことができる。

内容

1,絵本の読み聞かせ(第1時)

見開き1ページごとに,絵本を見せながら,読み聞かせをする。
読み聞かせをしながら,ストーリーの順番どおりに漢字カード(表)を提示し,黒板に貼る。

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指示1:

漢字を読んでみましょう。

漢字カードを1枚ずつ,提示して読ませる。
読めたときには,逐次ほめる。
読めなかった漢字は,教師が一度読み,繰り返して言わせる。

<児童の様子>
絵本の読み聞かせは,集中して聞いていた。
黒板に漢字カードを提示するたびに,漢字カードを見ていた。
ストーリーの流れは大体理解したようであった。
まだ読めない漢字がいくつかあった。

★漢字カード

富山の五十嵐勝義先生が考案された輪郭漢字カードをヒントに,独自のものを作成した。

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できるだけイメージが正確に伝わるよう,背面のイラストはイラスト集などから選んだ。(私が書いたイラストでは,イラストのイメージがあまり伝わらないため)
画像処理ソフト(Microsoft PhotoDraw2000 version2)を使用。
背景のイラストは80パーセントの透明化処理をした。白黒処理をするとイメージが伝わりにくいイラストはカラーのままとした。
文字は,教科書体フォントを使用。文字の形を正確に伝えるためである。
カードは,1枚10cm×10cmのサイズ。表と裏の漢字の位置が同じになるようにしてある。画用紙を切って両面に貼り付けた。

2,各場面ごとに登場人物と話の展開をおさえる(第2~4時)

一度絵本を読み聞かせする。

見開き1ページずつ絵本を見せ,登場人物をおさえる。

登場人物は,どんな様子なのか,どんなことを言ったのか発表させた。

各場面ごとに漢字カードを読ませた。

<児童の様子>
かなり詳しく話を覚えていて,絵本に書いてあるとおりに言葉を言おうとしていた。
漢字カードは,前回よりも読める漢字が増えてきた。
イラストをヒントにして読むことができているようである。

3,「ストーリーカード」を並べ替える(第5~8時)

場面ごとに絵本を読み聞かせし,「ストーリーカード」を提示する。

※「ストーリーカード」絵本の文章を漢字かな混じり文にしたカード

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指示2:

ストーリーカードを読みましょう。

教師が一度読み,繰り返して読ませる。

指示3:

ストーリーカードを並べ替えましょう。

各場面ごとに,裏返しにしたストーリーカードをトランプのように引かせ,順番に並べるようにした。
並べ替えたカードを黒板に張る。

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カードを並べ替えたら,教師がその場面の文章を読む。

指示4:

この順番でいいですか?間違っていると思ったら並べ替えなさい。

カードの並んだ順番を見て,さらに並べ替えさせる。
カードを直接触って移動させるのではなく,カードを読ませて,そのカードは何番目になるのかを言わせた。

それでも間違っている場合は,教師が再度文章を読みながら,修正した。

<児童の様子>
話の流れを思い出しながら,漢字の読めるストーリーカードを並べ替えることができた。
漢字の読み方があいまいなカードは,やはり並べ替えることができなかった。
漢字カードを示していない漢字のあるストーリーカードでも,一度読み方を教えただけで読むことができるものもあった。
漢字カードは,この時点でほとんど読めるようになっていた。
この授業は授業参観でも行ったのだが,授業の様子を見た保護者からは,児童の学習の力に驚きと感心の声があった。

4,漢字カードをヒントにして,ストーリーを話す(第9時)

一度絵本の読み聞かせを,最初から最後まで通して行う。

漢字カード(表)を読ませる。

指示5:

カードの裏側にも漢字が書いてあります。漢字を読みましょう。

漢字カード(裏)を見せ,読ませる。

読めた漢字は裏返しのまま黒板に貼り付けた。
読めなかった漢字は,再度表をチラッと見せて読ませた。

指示6:

漢字カードを見ながら,お話をしてください。黒板に張ってある漢字を必ず入れてお話します。

各場面ごとに話をさせた。
貼り付けてある漢字が読まれたときには,カードを裏返した。

貼り付けてある漢字が読まれていないときには,次のように指示。

指示7:

この漢字が入っていません。この漢字を入れてお話をしてください。

最後にもう一度漢字カード(裏)を読ませた。

<児童の様子>
漢字カード(表)は,すべて読むことができるようになっていた。
漢字カード(裏)は,「家」「宝物」「窓」「嘴」「四匹」を除き読むことができた。
<指示2>では,出てきた漢字を順番に使いながら,話をすることができた。
何度も絵本の読み聞かせを行っているので,文章を暗記している部分もあったため,暗記したとおりに話をしようとしていた。
最後に漢字カード(裏)を読ませたときには,すべてのカードを読むことができた。

感想と考察

もともと,国語的な能力が高かった児童であったのではと思わせるほど,漢字を学習する速さがあった。

1学期はひらがなの学習をしていたが,あまり学習できていないように感じていた児童であったが,漢字の指導を始めてからは,まさに「乾いた砂が水を吸うよう」であった。驚愕である。

文字を単語としてまとめて捉える力が不足していたため,ひらがなの学習では,4文字以上になると,ひらがな1文字ずつの拾い読みとなってしまい,単語として意味を捉えるのに時間がかかっていた。
ところが漢字に切り替えてからは,単語としてまとめて読むということを理解したようで,すらすらと漢字かな混じり文を読むことができてきている。

漢字は,一つ一つ分けて覚えさせるよりも,話の流れの中で覚えさせたほうが,効果が高いと感じている。
話の流れを理解させて,話の流れを追いながら,話の流れのイメージの一部分として理解できるのではないだろうか。
また,文章中に使われている漢字であるため,言葉としての漢字がどのように使われるかということを,理解しやすいと思われる。
特に,抽象的な概念の言葉は,その言葉一つだけを取り出したのでは理解しにくいが,文章中であれば,意味をイメージしやすい。(「町」「宝物」「四匹」)
動作を表す漢字も同様である。
今回の学習では「食べる」があったが,文章中では「ご馳走を食べる」と使われていて,「食べる」という動作の具体性がある。

ストーリーの流れを追わないで漢字の学習を行った場合についてとの比較はできないが,石井勲氏の実践にもあるように,「お話の中で漢字を教える」ことは,知的な発達に遅れのある子どもにも,かなり有効な手段であると言うことができる。

ただし,この実践には,
○絵本を読んでもらい内容を理解することができる
○絵を見て,その絵が何を示しているのか理解することができる
という学習レディネスが必要であることが考えられる。
この段階に達していない児童に対しての指導はしていない。

実際に授業をしていて,こんなにも子どもがのってきて,こんなにも楽しい授業であったのは,私個人としての喜びでもあった。
題材の選択から,教材の作成,授業の展開の仕方まで,その手順がはっきりとイメージできたのである。
養護学校は,児童の事態に即した指導をねらっていて,教科書を使わない授業が多ため,他の教科の指導では,1から指導の仕方を考え出していかなければならないが,この授業に関しては,とてもやりやすかったのである。

なお,この授業とは別に,私が授業を担当している女児には,漢字かな混じりの文章で,『ブレーメンの音楽隊』の音読の指導を行っている。
ひらがなだけの文章では,1文字ずつの拾い読みをしてしまい,文章の意味を理解できない児童である。
この児童に,漢字かな混じり文を「指置き音読法」で,行っているが,驚くほど,スムーズに文章を音読するようになってきている。
この実践に関しては,「漢字かな混じり文指置き音読法」をご覧いただきたい。

参考図書

学研ワールドえほん 『ブレーメンの おんがくたい』
絵 フェリシダ・デ・ホルナ 
文 寺村輝夫
1976年4月
学習研究社

(この実践で使った「ブレーメンの音楽隊」の文章は,上記の絵本を参考に,漢字かな混じり文にしました。)


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